大量の脱北者を防ぐには「体制保証」しかない 「経済特区を用いた高度経済成長」が現実解だ

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――トランプ政権からは、北朝鮮の非核化について「リビア方式」を望む声が出ている。北朝鮮の非核化に対して、米国は見返りを与えるか。

「トランプ大統領は北朝鮮の体制保証と経済的な見返りについて明確なプランを用意したうえで、金委員長との会談に臨まなければならない。そうでなければ、米朝首脳会談は大失敗に終わるだろう。北朝鮮に対する見返りについて、関係国は大筋では合意できるかもしれない。だが、詳細を詰めるのには時間がかかる。非核化についても、IAEA(国際原子力機関)による検証には時間を要する」

「米朝首脳会談までに合意内容の草案を細かくまとめ上げている時間はない。米朝会談ではそれよりも、非核化の意思が本当に北朝鮮にあるのかを確かめることが大切だ。仮に米国が北朝鮮に非核化の意思があるのを確認できたとしたら、たいへんな進歩といえるだろう」

インフラ分野では米国の援助が必要

――米朝はどのような経済協力が可能か。

「米国が投資できる分野は、潜在的には多数存在する。重要なのがインフラだ。まともに機能する空港、港、鉄道、道路、電力がなければ、国家の発展はありえない。通信も投資対象になるだろう。北朝鮮ではエジプトの通信会社、オラスコムとの合弁で携帯電話事業を進めてきたが行き詰まっている」

「北朝鮮から米国への輸出が可能になれば、労働集約型の製造業が受ける恩恵は大きい」

「関係国からの開発援助は、北朝鮮に本気で経済を改革開放する意思がある場合のみとすべきだ。そうしなければ、経済支援や投資はすべて無駄になる。新しい市場経済システムを受け入れられるように北朝鮮の意識を変えていくことこそが最大の課題になるだろう」

(文:チ・ダギョム)

筆者のチ・ダギョム氏は、北朝鮮ニュースの記者で韓国ソウルを拠点とする。以前はロイター通信の動画ニュース部門で働いていた。
「北朝鮮ニュース」 編集部

NK news(北朝鮮ニュース)」は、北朝鮮に焦点を当てた独立した民間ニュースサービス。このサービスは2010年4月に設立され、ワシントンDC、ソウル、ロンドンにスタッフがいる。日本での翻訳・配信は東洋経済オンラインが独占的に行っている(2018年4月〜)。

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