シンガポールで「財布持たない族」急増のワケ ブタ財布を持ち歩くのは日本人や中国人だけ

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実は、各種カードの一人当たりの合計保有枚数を各国・地域別に見ると、日本は1人当たり平均で7.7枚を保有していて、CPMIメンバー国の中(平均2.8枚)では、シンガポール(約10枚)に次ぎ2番目に多いのです。しかしシンガポールでは、カード会社による優待や特典が非常に大きいので、10枚以上のカードを使いわけているツワモノもいるほどです。

ではなぜ日本人はカードで支払う金額は大きくないのに、多くのカードを持ち歩いているのでしょうか。その理由の一つは、シンガポールのようにカード発行会社がたくさんあるため、事あるごとにカードを作る機会があって、いつの間にか増えていることが考えられます。にもかかわらず、J-Debitや交通系電子マネーが使えない店がまだあるなど、利便性が低いのです。

キャッシュレスは「緩やかなインフレ」のエンジンに

もちろん、カードやスマホでの決済は便利な一方、現金払いに比べると支払いの際に痛みを感じにくいため、消費が増えやすいという研究調査もあります。

確かに、その点、現金払いは家計管理の面で堅実さを発揮します。徹底的に節約をしたいのならば現金払いを心がけ、給料が振り込まれたら、直ちに貯金用、食費用など袋に振りわけて、食費は食費の封筒からしか使わないようにすると、自然とお金は貯まりやすいものです。現金払いは、堅実な日本人の気質に合っているともいえなくもないようです。

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でも、たとえば、クレジットカード用の袋を用意してそこにおカネを入れておけば、それが手持ちの金額であり、それ以上使わなければいいのです。しかも、国の経済全体ということで考えると、キャッシュレスにしたほうが、決済が効率化されて消費も増えていくように思います。現金のやりとりは店での負担となり、銀行など金融サービス側にも重い負担となってのしかかってきます。

これからは複数あるカード会社が自主的にサービスを統合するなどして、消費者の利便性を今よりも上げる必要があるでしょう。キャッシュレス化が一つのエンジンとなって、経済が活性化されるはずです。少しでも個人が消費に前向きになれば、緩やかなインフレに向かい、停滞している所得も増えるのではないでしょうか。実際、世界の流れは明らかに後者になっています。

クレジット(デビット)カードで払えば、ポイントが付いたり、キャッシュバックを受けたりといった特典もあります。もちろん、日本でもそうですが、税金、家賃、光熱費なども、一部ではクレジットカードで支払うことができます。定期的に必ず支払わなければならないこうしたおカネは、徐々にカード払いにすればポイントの面でもお得です。前回お話しした「低価格高品質」のサービスをやめることと、キャッシュレス化の促進が、日本を緩やかなインフレに導くカギになるはずです。

花輪 陽子 ファイナンシャルプランナー

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はなわ ようこ / Yoko Hanawa

1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)CFP®認定者。外資系投資銀行を経てFPとして独立。2015年から生活の拠点をシンガポールに移し、東京とシンガポールでセミナー講師など幅広い活動を行う。『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』 (講談社+α新書) 、『夫婦で貯める1億円!』(ダイヤモンド社)など著書多数。花輪陽子オフィシャルサイト 海外に住んでいる日本人のお金に関する悩みを解消するサイトも運営。まぐまぐ「花輪陽子のシンガポール富裕層の教え 海外投資&起業実践編」も。

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