太一は、「はあ~」と、大きなため息をついた。
「婚活って、難しいですね」
太一は身長170センチの痩せ型で面長、サイドを短く刈り込んだ髪型や服装には清潔感があり、見た目は決してモテないタイプではなかった。ただ、女性には積極的にアプローチできるタイプではなく、学生時代に女性と深い付き合いをすることがなく社会に出た。
大学卒業後は大手企業に就職をしたのだが、とにかく忙しい職場だった。周りには女性も少なく、出会いもないままに、今まできてしまったという。
初めての見合いで厳しい洗礼を受けたが、これもいい経験だ。落ち込む暇があったら、“ハイ、次!”の精神で、前に進んだほうがいい。太一には間髪入れずに、次の見合いを組んだ。
「会社の上司と話しているような感じ」
次の相手は、49歳の濱田敬子(仮名)だった。敬子は知り合い仲人の会員だったので、太一がどんなふうに見合いを進めていくかを見ようと、その仲人とともに30分ほど同席した。
2人は学部が違うものの同じ大学の出身だったこともあり、大学の話や仕事の話で、終始にこやかに会話を交わしていた。同席していたかぎりでは、太一に失言はなかった。
しかし、お見合いの後には、“お断り”がきた。その理由は、「いい方なのはわかるけれど、会社の上司と話しているような感じだった」というものだった。
“会社の上司のよう”というのは、女性がよくお断りの理由に掲げてくる常套句だ。いい人ではある。仕事にもまじめで誠実だ。でも、男としての魅力を感じないから、お付き合いをしていても、彼を好きになることはない。そんなときによく使われる。
この見合い結果を告げると、太一がぼそりと言った。
「はぁ~、またダメでしたか。こんな調子で、僕は結婚できるんですかね」
たった1時間程度の見合いなのだが、“断られる”というのは、相手から自分を否定されたということだ。それが続くと、誰もが落ち込む。自分を卑下したり、うまくいかないことを相手のせいにしたくなったりする。だが、そんな気持ちを引きずって次の見合いをしたところで、いい結果に結びつくはずがない。
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