筆記試験5時間!ドイツのエリート教育の中身 マークシートが多い日本のセンターと大違い

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日本のテストはマークシート方式のものが多く、つねに一定の批判がある。ドイツは対称的で記述が多く、しかも高度なものを要求される。

たとえばドイツ語の場合、「文学」と「即物的」なテキストが出題される。一例を挙げると詩の内容分析や、類似のテーマの文学作品などと比較し、時代による表現の特徴などの視点から解説していく。これだけでA4で10~15枚程度、多い場合は20枚程度書く生徒もいる。「即物的」なテキストでは政治家の演説などが用いられるが、これもまた、構造や表現についての分析を書かねばならないのだ。

英語の場合もリスニング試験と記述試験が行われるが、ニューヨーク・タイムズやガーディアンなどに掲載されている記事や小説が出題され、それに対して、言葉の定義、分析、比較などを英語で記述していく。

アビトゥアは試験のみならず、過去2年の成績も反映されるが、その成績では10~15枚の論文も評価の対象となる。ある程度専門的な内容になってくることもあり、親が手伝うことも多い。これには親もアビトゥアかそれ以上の知的訓練を経験していないと対応できない。ギムナジウム進学の生徒の6割程度が親も高学歴という統計もあるが、当然かもしれない。ともあれ、記述していく量と質の高さが半端ではない。気になる採点だが、記述試験については、教員2人で取り組み、公平性を担保しているようだ。

付け焼き刃では通用しない口頭試験

口頭試験もなかなか厳しい。試験時間はトータルで1時間。

たとえば歴史の場合、かなり前から複数のテーマが提示され、その中から自分で選ぶ。試験当日、最初の30分は教室でプレゼン用のメモなどを作成。必要に応じて、グラフや図などのOHP用のシートを作ることもある。

次に10分間でプレゼンテーション。その後、試験官の2人の教諭からの質問に答える。それで終わりと思いきや、次に自分が選んでいないテーマについても質問が飛んでくるのだ。そのため生徒側にとって結局提示された全てのテーマについて語れるように習得しておかねばならないのだ。

気になるテーマだが、その一部を見ると次のようなものが提示されている。

15世紀から18世紀の階級社会における生活
19世紀の新興工業社会の生活
ワイマール共和国――民主主義はあったか? それともなかったか?
ドイツ人とホロコースト
中東――世界の政治紛争の歴史的なルーツ
アメリカ――反抗的なコロニーから帝国主義の現在まで
識別パターンとしての「フォルク」と「ネーション」
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