日本人の「ハチ公体質」は、不幸しか招かない 上下関係で成り立つような忠誠心は危険だ

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結果、日本では卒業を迎える頃には、同じ制服を着て、同じ髪型をして、同じ意見や発想を持つクローンのような学生が勢ぞろいする。海外に拠点を持つ派遣会社は、極東アジアの中で、日本の卒業生は最も退屈で野心のない人々だと嘆いている。彼らは現状維持が最善だと考え、権威に逆らうことはしない。自ら積極的に質問をすることもないという。

指導者不足に陥っている日本

ハチ公体質は、指導者ではなく、「指導される人々」を作り出してしまった。自分の上司がどんなにポンコツで腐っていても、「上司」だという理由だけで彼らは従順に従ってしまう。安倍晋三政権がこんなに長く続いているのは、ほかに対抗できるまともな政党がないからだ。国政でも、自治体レベルでも各党は立候補者を確保するのに苦労している。

企業でも、なかなか次のリーダーが誕生しない。ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長やソフトバンクグループの孫正義会長兼社長、キヤノンの御手洗冨士夫会長CEOなどが長くトップに就いているのは偶然ではないだろう。

こうした中、日本にも「忠実じゃない」人たちが出てきている。前文部科学事務次官の前川喜平、愛媛県知事の中村時広、日大アメフト部の宮川泰介のような人たちだ。

日本では今、こうした一種の「反乱者」に対して、見えないが深くて強い共感が向けられている。凶悪な上司などの命令のせいで仕事上、そして私生活で宮川選手のような苦境を経験した多くの人が彼に共感しているのかもしれない。

が、日本の若い世代はこうした権威に対してノーを突きつけ始めているように思える。厚生労働省の発表によると、新規大卒就職者の32.2%が3年以内離職している。もちろん、理由はいろいろあるだろうが、少なくとも若い世代は不満があったら我慢することはしない。確かに若い世代でも、表立って上司や会社に立ち向かえる人は少ないだろう。それでも、少しでも理不尽な状況に背を向ける人が増えれば、日本は少しずつ変わっていくかもしれない。

レジス・アルノー 『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員

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Régis Arnaud

ジャーナリスト。フランスの日刊紙ル・フィガロ、週刊経済誌『シャランジュ』の東京特派員、日仏語ビジネス誌『フランス・ジャポン・エコー』の編集長を務めるほか、阿波踊りパリのプロデュースも手掛ける。小説『Tokyo c’est fini』(1996年)の著者。近著に『誰も知らないカルロス・ゴーンの真実』(2020年)がある。

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