KDDIは「Netflixパック」に何を期待したのか 髙橋社長が明かした「5G戦略」の詳細
ーー次世代ネットワークを予感させる「ワクワク体験」の1つとしてネットフリックスとの提携が発表されました。5Gに向けて、今後はアプリケーションごとに事業者と手を組む協業を進めていくのでしょうか。
5Gネットワークの実証試験環境を提供するKDDI DIGITAL GATEの設置は、そうした協業を行なう場として企画・設置することを決めたものです。次世代アプリケーションの開拓や実証などを行っていく場にしていくため、昨年買収したソラコムやアイレット、業務提携をしているScrum Inc.(アジャイル開発の教育サービス事業者)にも入ってもらうほか、すでにエンドユーザーとの接点を持っている多様な事業者に参加してもらうことで、さまざまな次世代アプリケーション開拓プロジェクトを動かしていきます。
また、KDDI DIGITAL GATEには、現在は渋谷ヒカリエにあるKDDI ∞ Labo(ネットワークサービスのスタートアップに協業パートナーとともにノウハウなどを提供する新事業共創プロジェクト)も統合することで、さらなる化学反応を目指します。
「端末」だけの差異化はどんどん難しくなっている
ーー5G/ネットワークスライシングの時代は他事業者との協業モデルが鍵を握っている、と。
端末の性能や機能が向上してきたこともあって、端末開発だけの差異化はどんどん難しくなってきています。“顧客価値とは何か”を考えたとき、従来の価値観で言えば“通信回線の品質”だったかもしれません。しかし実際には利用しているアプリケーションの質こそが大切です。
「通信事業者はどこか」が問題ではなく、顧客がどんなアプリケーションに価値を見いだすのか。5G/ネットワークスライシングの時代は、スライシングのやり方で品質と価格が変わってきます。価値の高いサービスを提供している事業者に、KDDIが最適だと選んでもらえるように1社、1社と向き合っていくことが大切です。
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KDDIがネットフリックスと提携した狙いは、大きく分けて2つありそうだ。
まず目先の競合対策。dTV、dアニメストア、それにDAZNとの提携など、NTTドコモが快走する定額映像配信サービスへの対抗といった側面は無視できない。
KDDIのビデオパスは100万を超える契約者を抱えるとはいうものの、ドコモのdTVなどに比べ存在感が高いとは言い難い。調査会社のジェムパートナーズによると2017年の定額制動画配信市場は1383億円だが、その中でビデオパスのシェアは6%台で7位。
トップシェアはdTVは20.3%で、Huluの13.5%、U-NEXTの12.6%と続く。ここに追いつくためにも、1億2000万契約を抱えてグローバルでもっとも多くコンテンツ制作に投資をしているネットフリックスの圧倒的なスケールメリットを活用し、国内向けコンテンツを多く持つビデオパスとセットで訴求。契約者数を伸ばしたいという意図があるのだろう。
一見、ネットフリックスのブランドを借りた新サービスにすぎないように思えるが、提携には両社双方に合理性がある。
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