米商務省、通商拡大法232条に基づく調査開始 日本やEUの自動車関連企業に圧力の狙いも
[ワシントン 23日 ロイター] - 米商務省は23日、乗用車やトラックなどの車両や関連部品の輸入が国内の自動車産業を侵害し、安全保障を脅かしたかどうか通商拡大法232条に基づき調査を開始すると発表した。鉄鋼・アルミニウム輸入制限と同様の手段を自動車にも用いる。
ロス商務長官は声明で「外国からの輸入によって、数十年にわたり米国内の自動車産業が侵害されていることを示唆する証拠がある」と指摘。「商務省は、(車両や部品の)輸入が米国の経済を弱体化させているかどうか、安全保障を脅かす可能性があるかどうかについて、本格的で公正な調査を行う」ことを明らかにした。
商務省によると、国内の自動車生産の減少が経済を弱くし、コネクテッドカーや自動運転車、燃料電池、電気モーター・バッテリーなどを開発する能力が低下したか調査する。
トランプ大統領は別の声明で「自動車や自動車部品など中核的な産業は国力の重要な要素だ」と主張した。
調査開始の正式発表前、トランプ政権の関係者は、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の相手であるカナダとメキシコや、米国に多くの自動車を輸出する日本と欧州連合(EU)に圧力をかける狙いもあると説明した。
トランプ大統領はこれに先立ち、自動車、トラック、部品の輸入を巡り通商拡大法232条に基づく調査開始を検討するよう商務省に指示したと発表。これらの輸入が米国の安全保障を脅かすかどうかを判断するとしていた。
日本やドイツなど大手外資系自動車メーカーの団体「ヒア・フォー・アメリカ」はトランプ政権の決定を批判した。
トヨタ自動車<7203.T>、日産自動車<7201.T>、韓国の現代自動車<005380.KS>などで構成する世界自動車メーカー協会のトップ、ジョン・ボゼラ氏は「米国の自動車産業は成長し、繁栄している」と指摘した。
昨年は米国内で1200万台の乗用車やトラックが生産されたとした上で「われわれが知る限り誰も保護を求めていない。この措置は必然的に米国内で(消費者の)選択を狭め、乗用車やトラックの価格引き上げにつながる」と述べた。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルはこれに先立ち、トランプ政権が通商拡大法232条に基づき調査を開始し、関税を最大25%に引き上げる可能性があると報じていた。
日中韓は状況を注視
日本、中国、韓国の各国政府は状況を注視すると表明。中国政府は自国の利益を守ると付け加えた。
中国商務省の高峰報道官は24日の定例会見で「中国は国家安全保障に関する条項の乱用に反対する。多国間の貿易システムに深刻なダメージを与えるほか、正常な国際貿易秩序を乱すことになる」と指摘。「われわれは状況を注視し、影響を精査するとともに、自らの正当な利益を断固として擁護する」と述べた。
日本と韓国の自動車メーカーによって米国で販売される自動車の過半は現地で生産したものだが、大半の企業はアジアやメキシコ、カナダなどの工場から米国向けに輸出も行っている。
米国に昨年輸入された自動車のおよそ3分の1はアジアから輸出されていた。
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