スーパーゼネコン清水建設と大成建設を分析 東京五輪の経済効果は、本当に大きいのか!?

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売り上げ増の背景には、景気対策に伴う公共工事の増加もあります。「公共工事請負金額」のデータによると、4月から6月にかけて前年比20~30%も伸びているのです(下の表参照)。

高騰する人件費や建設資材

大成建設の業績も、清水建設とほぼ同じ動きをしています。「売上高合計」は、2572億円から2860億円まで増加。ただ、「売上原価合計」が2343億円から2643億円まで増えてしまったことで、「営業利益」は54億円から36億円へと減少しています。(→大成建設の損益計算書6ページを参照)

2社とも、なぜ、売上原価が増えてしまったかといいますと、工事の施工にかかる人件費(労務費)や建設資材の価格が高騰しているからです。

建設関係の会社から話を聞くと、「人手が足りない」という声をよく耳にします。「有効求人倍率」を見てみますと、2013年6月は0.92倍、1年前の2012年6月は0.81倍だったわけですから、確かに今は、昨年より人手を確保しにくくなっていることがわかります。

これは、東北地方の復興や、公共工事の増加によって人手が足りなくなっているために、賃金を上げないと人員を確保できない状況になっているのです。また、景気回復や金利先高感によってマンション需要も一部地域では強く、それも、建設従事者の需給を逼迫させています。さらには、円安の影響で輸入資材などやエネルギー価格も上昇しています。そのため、売上高が増えても売上原価がかさんでしまって、利益が上がりにくい状況となっているわけです。

そこで各社は、赤字になる可能性のある受注を減らすことで、利益率を高めようとしています。ただ、今後も景気対策によって公共工事が増え続けるでしょうし、東京五輪へ向けた建設工事も始まりますから、人手不足は続くのではないかと考えられます。東京五輪設備自体の着工は、すぐに始まるといことはないでしょうが、その関連整備が始まる可能性があるのです。

たとえば、既存の私鉄線を利用しながら、成田空港と羽田空港を新しい地下鉄の建設も含めて、つなぐという大きな計画があります。完成すれば、東京駅近くの「新東京駅」から羽田にかけて18分(現状では約30分)、成田へは36分(現状では約1時間)で移動できるようになるのです。この工事が始まれば、ますます人手が足りなくなってしまうでしょう。

スーパーゼネコンは、これから東京五輪に関連する建設工事が増えて、売上高が伸びてくる可能性はありますが、その一方で、人手不足や原材料高から「売上原価」がますます増えてしまうおそれがあります。そういう意味では、売上規模は拡大しますが、それに見合った利益を十分に確保できないかもしれません。場合によっては、東京五輪の予算規模の見直しを迫られる可能性もあります。

今後の業績を見極めるためには、売上高だけでなく、「売上原価」の上昇にも注意を払わなければならないでしょう。

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