北朝鮮「巨大リゾート計画」は"非常識"の塊だ ビル170棟以上を猛スピードで建設中
「韓国人や日本人観光客が押し寄せるようにならないかぎり、ウォンサンのリゾート施設が軌道に乗ることはない。北朝鮮で観光業に携わっている人たちの多くは、そう考えている」。こう話すのは、米パシフィックフォーラム戦略国際問題研究所(CSIS)の研究員で、定期的に北朝鮮を訪れているアンドレイ・アブラハミアン氏だ。
「(このリゾート施設の成功は)韓国、日本、米国と北朝鮮の関係が劇的に改善し、観光がもっと自由に行えるようになるかどうか次第だということも、北朝鮮の観光業従事者は知っている」と、アブラハミアン氏は言う。「だが、このようなことはいずれも、彼らが手出しできるような問題ではない」。
米国企業による民間投資も?
ただ、米国のマイク・ポンペオ国務長官は米朝首脳会談が成功裏に終わった場合、米国企業による北朝鮮への民間投資を認める可能性があると示唆しており、北朝鮮外交に近く突破口が開かれる展開もありうる。
「最近の南北融和の流れに弾みがつけば、北朝鮮は(南東部にある)金剛(クムガン)山での観光事業を再開し、ウォンサン方面へと拡張することになっている」と、ウォンサンのリゾート計画に通じた観光業界関係者は匿名を条件に語った。
この関係者は、人里離れたカルマ半島の北東部側に北朝鮮が韓国人観光客を誘致しようとしているのは「理にかなっている」と話す。なぜなら、こうした場所なら観光客は自然と地元住民から隔離されることになるからだ。
「それ以外に、街からこんなにも離れた場所にリゾート施設を造る理由はない」
北朝鮮の建築物に詳しいカルビン・チュア氏は、衛星写真には周辺施設が写っているが、今のところ出入りは厳重に規制されているようだと話す。
「施設の配置を見たところ、出入り口はたった1カ所しかないようだ。ということは、リゾート施設の出入りは制限される可能性が高い。(敷地をフェンスや敷居で囲い、部外者の立ち入りを厳重に規制した)ゲーテッドな住宅地かリゾート施設にするつもりなのだろう」
このような規制は、用意周到に練られたものかもしれない。金剛山や開城(ケソン)市といった観光地への韓国人の出入りを厳しく制限していたのが北朝鮮だからだ。北朝鮮政府は北朝鮮人と韓国人の交流が広がるのを防ぐのに、相当な力を注いでいた。