鉄鋼メーカーが今、新興国展開を急ぐワケ カントリーリスクを凌駕する、もう一つのリスク

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国内最大手の新日鉄住金はこの3年間でメキシコ、タイ、インドに自動車用のハイテンや溶融亜鉛メッキ鋼板(自動車のドアや車体下部に使われ耐食性に優れる)の製造拠点を相次いで設立。宝鋼集団との中国合弁工場では、溶融亜鉛メッキ鋼板の生産増強も行っている。

新日鉄住金と宝鋼集団の合弁工場「BNA」

JFEホールディングス傘下のJFEスチールも、タイやインドネシアで自動車用の溶融亜鉛メッキ鋼板の製造拠点を立ち上げた。さらに、年内にインドの技術供与先がハイテンや溶融亜鉛メッキ鋼板の製造を開始する見通しだ。

鉄鋼各社が自動社向け鋼板の加工設備の新設を急ぐ背景には、自動車メーカーが新興国戦略を加速しているという事情がある。

部材調達方針に変化

自動車各社はリーマンショック後の超円高で輸出車の採算が悪化。需要拡大が見込める新興国を中心に、現地生産の比率を高めている。しかも、全世界で販売される「世界戦略車」については、工場がある国で調達可能な部材しか使わないという方針に傾きつつある。

それゆえ、自動車部品メーカーは「たとえ赤字でも日系自動車メーカーの工場がある国へ進出せざるをえない」(大手自動車部品メーカー)事態に陥っている。これは裏を返せば、主力車種については「海外で調達できない部材は、日本でも調達しない状況になっている」(神戸製鋼の山口副社長)ことを意味する。国内での取引を維持するためには、新興国に出ざるをえないわけだ。

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