「運動すると幸福感が増す」のは嘘じゃない 頻度が高い人ほど幸せを感じるとの調査も

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だが今回、分析の対象とした研究の多くは観察研究だったことから、運動が直接、幸福感を左右しているのか、たまたまそういう結果が出ただけなのかを判断することはできないとチェンは言う。

明るい気分で生活している人のほうが、運動を始めてなおかつ継続できるのかもしれない。だとしたら、運動が人を幸せにするのではなく、幸せな気分が運動を続ける支えになっているということになる。

幸せな気分をどう測るかの問題も

そもそも幸せな気分とは主観的なものであり、あいまいな概念だ。今回、分析の対象となった研究は主に対象者にどのくらい幸せな気分かを尋ねるものだったが、そのときの気分が幸せかどうかの判断基準は人によって異なる。つまり、だから、運動習慣を取り入れることでどのくらいの幸せ効果が期待できるかを一般化して述べるのは難しい。

また当然ながら、運動がどのような機序で気分に影響を与えるかについては分析の対象とはなっていない。

「一部の人々に対しては、社会的要因が幸せ効果をもたらしている可能性も示唆されている」とチェンは言う。言い換えれば、エクササイズのクラスやジムに通う際の人付き合いが、気分を高める効果をもたらしているのかもしれないのだ。

その一方で運動が直接、脳を含む体に働きかけている可能性もある。

「運動に健康改善効果があるのは周知の事実だ」とチェンは言う。「健康を実感できるおかげで幸福感が増しているのかもしれない」

また、新たな脳細胞を作り出すよう促したり、脳内物質を変化させるといった形で、運動が明るい感情を生み出すように脳を作り変えている可能性もある。

チェンは今後の実験でこれらの疑問が明らかになることを期待している。だが現時点では「運動している人はしていない人より幸福になれそうだと言うにとどめておいたほうが無難だ」とチェンは語った。

(執筆:Gretchen Reynolds記者、翻訳:村井裕美)
(c) 2018 New York Times News Service

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