富士フイルム「信頼関係なき」買収の前途多難 二転三転する米ゼロックス買収交渉の行方
会見はもっぱら、買収契約を破棄した米ゼロックスに対する、富士フイルムHDの反論の場になった。
米ゼロックスは買収契約の破棄の理由として、「富士フイルムHDが(2社の合弁会社である)富士ゼロックスの監査済み財務諸表を期限までに提出しなかった」ことを挙げている。だが、富士フイルムHD側は「当社は義務を履行した」(広報)。
また、米ゼロックスはSEC(米国証券取引委員会)に提出した書類の中で、「14日の週にただちに面談を求めたが、富士フイルムHD側から21日の週にならないと会えないと伝えられた」と指摘している。
その点について、助野社長は「フィナンシャル・アドバイザーではなく、取締役会議長であるロバート・キーガン氏の名前で文書を出してほしい、14日の週は決算発表があり対応できないので21日の週ならと伝えた。だがその後、まったく連絡がなく、(13日に)キーガン氏も退任して、一方的に契約を破棄された」と主張した。
契約破棄に伴い損害賠償を検討
助野社長が繰り返し強調したのが、「われわれの提案したスキームがベスト」という点だった。今後どのように米ゼロックスの株主を説得するのかについて問われると、富士ゼロックスとの統合効果を強調し、「会社の中身を変えていくにはこれしかないと株主に説明する」(助野社長)。
一方で、米ゼロックスから買収スキームの提案があれば、「はねつけるわけではなく、富士フイルムHDの株主や将来にとってプラスであれば検討する」(同)と、再考の余地を残す発言もした。アイカーン氏が「米ゼロックス1株あたり40ドルでの買収(現在の株価は28.5ドル程度)なら、考える余地がある」と発表していることに対しては、明言を避けた。

ただ、買収交渉の先はまったく見えない。結局、助野社長はこれまでの主張を繰り返し語っただけだ。また今回の契約破棄を受け、米ゼロックスに損害賠償を求める考えも改めて示した。両社の信頼関係がここまで失われた以上、現状のスキームで買収を進めるのはかなり難しいだろう。
富士フイルムHDにとって、富士ゼロックスが展開する事務機器事業は「大きな経営資源を投入するというよりも、キャッシュカウ(稼ぎ頭の)事業」(助野社長)。
ペーパーレス化が進み、事務機器の事業環境は厳しさを増している。市場の成長が見込めず、買収に高額な資金を投じるわけにはいかない。一方で足元での収益貢献は高く、手放すわけにもいかない――。二転三転する買収劇の背景には、富士フイルムHDにおける事務機器事業の位置づけの難しさがある。
買収を成功させるためには、条件の引き上げが必要との見方は強い。富士フイルムHDが選択を迫られる日が近づいている。
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