日中韓会談、対北朝鮮で「蚊帳の外」の日本 主役は米朝、政局がらみで問われる安倍外交
大型連休後半にゴルフなどで英気を養った安倍晋三首相だが、連休明けは重要な首脳外交と再開国会での与野党攻防が複雑に絡み合う、慌ただしい1週間となった。19日ぶりの国会正常化と並行して、8日に李克強中国首相、9日に文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領がそれぞれ初来日し、同日、安倍首相を議長とする日中韓首脳会談が2年半ぶりに開催された。その一方で、10日には加計学園問題に絡む柳瀬唯夫元首相秘書官の国会招致が実施され、野党側の厳しい疑惑追及が政局の混迷に拍車をかけた。
政権の不祥事連発で内閣支持率が下落する中、得意の外交で態勢の立て直しを狙う首相だが、内外の関心は6月12日の開催が決まった史上初の米朝首脳会談に集まった。首相が主役を演じるはずだった日中韓首脳会談でも、対北朝鮮外交での「蚊帳の外の日本」が際立つ。国会での柳瀬氏答弁が逆に疑惑を深める結果となったこともあり、首相サイドは「外交成果が米朝や政局で帳消しにされた」(官邸筋)と肩を落とした。
北朝鮮の非核化をめぐっては、関係各国が目まぐるしい外交交渉を展開しているが、その主要プレーヤーとなる日中韓3首脳は9日、東京・元赤坂の迎賓館を主舞台に、午前は日中韓、午後は日韓、日中の順で各首脳会談を行い、それぞれの成果を共同記者発表や共同宣言などの形で世界に発信した。
共同宣言に「CVID」は盛り込まれず
日中韓会談では、朝鮮半島の完全な非核化に向け、国連安保理決議に基づく緊密な連携で一致した。日本人拉致問題では、安倍首相による中韓両首脳への協力要請を受けて、共同宣言に「早期解決への中韓両首脳の支持」が明記された。その一方で、首相が強く主張した北朝鮮に対する「核・ミサイルの完全、検証可能かつ不可逆的な放棄(CVID)」との表現は「対話ムードに水を差す」との中韓両国の抵抗で共同宣言には盛り込まれなかった。
日中韓3首脳による会談は、1999年にマニラで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓による首脳会談の際、小渕恵三首相(当時、故人)の提案で3首脳が朝食会を開いたのが始まり。定例化合意を受けた初会合は2008年末に福岡で開催され、麻生太郎首相(当時、現副総理兼財務相)が議長を務めたという歴史がある。
ただ、首脳会談開催をめぐる日程協議が難航することも多く、当初の目標だった年1回開催も3国間でのさまざまな外交トラブルなどで実現しにくい状況が続いてきた。今回も議長国の日本が当初目指した2016年末開催は、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領(当時)の失脚で見送りとなり、昨秋の開催も中韓関係の悪化で流れたが、年明けから急展開した朝鮮半島情勢で日中韓連携が「緊急かつ重要な課題」(外務省幹部)となったことで、ようやく2年半ぶりの開催にこぎつけた。
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