41歳で地方移住、収支トントンでも得た幸せ

「利益を出す」より大切な生き方がある

2つ目の変化は、子どもに優しくなったことだ。背景には、マイホームを得て、居住環境が格段に向上したことがある。賃貸住まいの人の多くは、壁に画びょうをさしたり、自分流に手入れをすることは原状回復を理由にやりたがらない。しかしマイホームであれば話は違う。何をやっても自由なのだ。子どもが壁に落書きしても、走り回っても誰にも迷惑がかからない。子どもが自由に楽しく生活するところを見ることで、母親としてのAさんのストレスは激減したという。

子どもをしかることが少なくなったAさん。こうして心にゆとりがでてくれば、他人の言葉も耳に入ってくるし、心遣いを気持ちよく受け入れることもできる。そして、前述の通り、地域の人とも良好な関係を築けるようになるというわけだ。ちなみに、リフォームは10万円以下で済んだという。近くにリフォーム業を営む人もいて、何かと世話を焼いてくれるのも田舎ならではかもしれない。

支出は以前より約10万円減少

さて、3つ目の変化は生活コストが下がったことである。筆者はFPなので、生活関連の数字が知りたくなり、図々しくも家計の情報を頂いた。もちろんいろいろなコストが安くなっているだろうというのはイメージできるのだが、どれほどわかりやすい効果があったのかを見てみよう。

【毎月の支出】
    移住前     移住後
住居費 7万3000円  8000円(税金含む)
保育料 5万円     2万5000円
交通費 5000円    1000円

移住前から支出が10万円近く減っている。一方で、車を所有することになったので、ガソリン代や維持費はプラスになっているが、支出の減少に比べれば小さいものだ。食費はおすそ分けが相当あるようで思っていたよりもかからないという。実際に、とれたての野菜をどっさりもらったり、タラの芽、こごみ、鹿肉、川魚など獲れすぎてしまった食材をありがたく頂いているそうだ。周りの人たちも放っておけないのだろうか。これはAさんの人柄のなせるわざかもしれない。

収入は書道教室の収入、児童扶養手当、児童手当、養育費などで15万円ほど。今のところ、収支トントンだが、今後は定期的に埼玉で書道教室を開催したり、長野県でスカイプなどを使い遠隔で指導したりする予定だという。ネットのおかげで住む場所にかかわらず、収入を得られるようになったのはAさんにとっては大きい。

さて、小さい子どもがいる人にとっては、子育て環境や教育も重要な要素だと思うが、Aさんが移住した佐久穂町は、子育て支援も充実している。たとえば、同町では満18歳(高校生)まで医療費を助成してくれるほか、不妊治療助成や妊婦健診助成、出産祝い金など金銭的支援もある。また、離乳食教室、ママ友作り、母子相談なども実施している。

教育面で言えば、2015年に小中学校が統合し、新たな校舎で施設一体型の小中一貫教育を行っている。英語教育やふるさと学習などに力を入れているほか、地域が支える「学校応援団」を組織し、読書や安全パトロール、学習支援などを行っている。

さて、移住を考えている人へFPからアドバイスするとしたら、そのポイントは2つほどある。1つ目はなぜ移住したいのかを深掘りすること。結果論であるが、移住の動機が強いと移住ができるし、弱ければ移住には至らない。ただ、日常生活において自分の人生にとって移住がどれほどの価値があるのか考えるのは難しい。

次ページ移住する際に、収入を心配する人は多いが・・・
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