米国は中国を一体どれだけ警戒しているのか トランプ陣営の姿勢は両国経済に影響する
日本では、1987年に東芝の子会社の東芝機械が旧ソ連へ工作機械やソフトウエアなどを規制に反して輸出していたことが明るみに出ました。担当者はCOCOM規制違反であることを認識しながら、虚偽の許可申請を通産省(現経済産業省)に提出して輸出したとされます。警視庁の捜査が入り、東芝機械の幹部2人を外為法違反で逮捕。これが外交問題化してアメリカでは対日感情が一気に悪化しました。輸出した工作機械などが旧ソ連の潜水艦の建造のための技術に使われたのでは、という疑いがもたれたのです。
最新の軍事技術に転用されればアメリカにとって直接の脅威となりますから、対日感情が悪化するのは当然といえます。古いニュースビデオで、アメリカ人が東芝製のラジカセをハンマーでたたき壊している風景を見たことがある人はいるかもしれません。それが東芝機械のCOCOM規制違反事件の余波の象徴的なシーンです。
つまり、中国が知的財産権侵害という形でアメリカや日本の最新技術を盗用するという事態が起きているいま、COCOMの中国版(for Red China)が作られる可能性があるということです。
冷戦時代は自由主義陣営と共産主義陣営が経済的に競争することは基本的にはありえなかったのですが、現在の米中間ではつねに経済競争が行われています。あるいは軍事技術がテロ支援国家を通じて、テロリストに流れるおそれも出ています。COCOMとすっかり同じ枠組みを作る意味はありませんが、21世紀型COCOMのシステムの構築は検討に値します。
アメリカ一国なら安全保障の問題であるとして、伝家の宝刀「通商拡大法232条」を抜くことができますし、そうなった場合、当然、同盟国である日本にも同じ枠のなかで適用される可能性もあります。アメリカは技術盗用に関しては、今後もかなり強気な姿勢を続けていくでしょう。
ホワイトハウス人事で対中姿勢がわかる
今回の鉄鋼・アルミニウムの輸入制限に代表されるような経済政策を踏まえて、トランプ大統領は中国との経済的な関係をどうしようと考えているのでしょうか。
トランプ大統領の中国に対する考え方は、まず、ホワイトハウス人事の差配で推し量ることができます。
トランプ大統領は今年3月15日、ツイッターで国家経済会議(NEC)の次期委員長に保守派の経済評論家のラリー・クドロー氏を指名(4月に就任)しました。前任のゲイリー・コーン氏は鉄鋼・アルミニウムの輸入制限に対して反対し、辞任を表明したのはよく知られていますが、後任のクドロー氏は通商政策に関して中国の知的財産権侵害などを問題視して、対中制裁も辞さない考えをテレビで明らかにしたように、対中強硬派といっていいでしょう。
しかも同氏は当初、鉄鋼・アルミニウムの輸入制限に反対していながら、対象からカナダなどを除外したことを理由に、賛成に転じたとされています。トランプ大統領からすれば、意外に扱いやすいイエスマンだったのかもしれません。
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