米国は中国を一体どれだけ警戒しているのか トランプ陣営の姿勢は両国経済に影響する

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さらに国家通商会議(NTC、現在は通商製造業政策局)元委員長のピーター・ナヴァロ氏の大統領補佐官(通商政策担当)就任も近いとされています。『米中もし戦わば 戦争の地政学(原題:Crouching Tiger)』(文藝春秋)の著者として知られ、こちらも対中強硬派として知られています。

また、国家安全保障問題担当の大統領補佐官にジョン・ボルトン氏を起用しました。

元米国国連大使で口ひげが特徴的なボルトン氏は、アメリカきっての保守派で、北朝鮮の体制転換や、イラン核合意の破棄を主張する強硬派として知られています。親台湾派の代表的な人物であり、中国からすれば天敵のような人物です。この人事に中国国営の新華社は「有名なタカ派」と紹介し、その対外強硬路線とトランプ大統領が掲げるアメリカ・ファーストとの類似性を指摘しました。中国としては出方をうかがいつつも、警戒感をあらわにしていると見るべきです。

5月9日に、トランプ大統領はイラン核合意から離脱し、イランに対して過去最大の経済制裁を行うと発表しましたが、ボルトン氏の影響を確実に受けています。

ちなみに、ボルトン氏の前任のハーバート・マクマスター氏は現役の陸軍中将ですが、北朝鮮問題では解任されたレックス・ティラーソン国務長官と連携して、制裁圧力で外交解決を図る路線を支持してきました。

もう一つ、ティラーソン氏の後任には、トランプ大統領お気に入りの中央情報局(CIA)のマイク・ポンペオ長官が指名されました。

ようやくトランプ氏の望むタカ派の布陣が完成

こうした一連の人事から、トランプ大統領が中国に対していっそう強硬な姿勢で臨む考えなのは間違いありません。政権発足当初は共和党主流の意見を取り入れた人事でしたが、1年超が経過し、ようやく自分の望むタカ派の布陣が完成したからです。

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トランプ大統領の発想のベースは、アメリカにとってメリットがあるかないかというもので、いまのところ中国を主体に考えていないのは確かです。

政治と経済は表裏一体。トランプ陣営の対中姿勢が、両国の経済にも大きく影響します。

アメリカにとってメリットがあるものは「イエス」、ないものは「ノー」、と極めて単純です。ウィンウィンの関係が前提にあればいいのですが、アメリカにとって中国の安価な鉄鋼が入ってきて得することはありえません。いかなる政治力を駆使しても、防ぐはずです。

欧米人は自分に得があるかないかの判断がすごく速く、かつシンプル。もともと英語の言語形態が、イエスかノー。その思考回路で考えていくと、トランプ大統領の思考モデルも比較的わかりやすくなると思います。

渡邉 哲也 作家、経済評論家

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わたなべ てつや / Tetsuya Watanabe

1969年生まれ。日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務した後、独立。複数の企業運営などに携わる。大手掲示板での欧米経済、韓国経済などの評論が話題となり、2009年、『本当にヤバイ!欧州経済』(彩図社)を出版、欧州危機を警告しベストセラーになる。内外の経済・政治情勢のリサーチや分析に定評があり、さまざまな政策立案の支援から、雑誌の企画・監修まで幅広く活動を行なっている。『「お金」と「経済」の法則は歴史から学べ!』(PHP研究所)のほか、『パナマ文書』『ポスト平成ですごいことになる日本経済2.0』(以上、徳間書店)、『貧者の一票』(扶桑社)、『メディアの敗北』(ワック)など著書多数。最新著は、『「米中関係」が決める5年後の日本経済』(PHP新書)。

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