ICOによる資金調達が地方の活路になるワケ

仮想通貨に対する不信を乗り越える

とはいえ、異なる地方自治体が発行した地方債は、それぞれ別々の金融商品だ。カリフォルニア州債とニューヨーク市債は、やはり同一券種ではない。そうなると、カリフォルニア州債を購入した投資家が、流通市場で転売したいなら、カリフォルニア州債を購入したいと思う別の投資家を見つけて、価格(や金利)の交渉をしなければならない(といってもその仕事は仲介する証券会社が主にする)。ニューヨーク市債を購入したいと思う別の投資家では相手にならないのだ。

投資家は、ひとたび購入した地方債を、流通市場で買ってくれる別の投資家がいなければ、嫌でも持ち続けなければならない。自らの都合の良いタイミングで流通市場で転売できないなら、その見返りを購入段階でプレミアムとして上乗せしてもらわなければ、投資家にとって割が合わない。

この換金性が低い不都合を償うための投資家への報奨を、流動性プレミアムという。流動性プレミアムは、金利(や債券価格)に上乗せされる。

地方債の悩みは流動性の低さ

地方債の悩みの1つは、流動性(換金性)が国債よりも低いことにある。今までは、それを甘受せざるをえないとみられていた。ところが、このたびのバークレー市の取り組みが実現すれば、変わるかもしれない。

仮想通貨を用いた資金調達方法の1つに、ICO(Initial Coin Offering:新規仮想通貨公開)がある。たとえば、地方自治体がICOをするとなると、地方自治体が投資家から仮想通貨を集め、投資した証しとして「トークン」を地方自治体が投資家に与える。このトークンが、従来の地方債の証券(借金証書)に代わるものといえる。ひとたびトークンを得た投資家は、自由にトークンを別の投資家に転売してもよいし、その転売で差益を得てもよい。

これだけならば、従来の法定通貨を用いて地方債を発行していたのと何も変わらない。ただ、ここで従来の地方債と異なる点が2つある。1つは、ICOをするときに、手数料が少なくて済むことである。従来の地方債は、市場で公募発行する際にはその事務を担う証券会社に多くの手数料を払ったり、その準備のために多くの時間がかかったりした。

もう1つは、用いたトークンの流動性が高いなら、前述した流動性プレミアムを低くできることである。異なる地方自治体が発行した従来の地方債は、それぞれ別物という扱いだった。しかし、今後もし多くの地方自治体が同じトークンを使うなら、異なる地方自治体が資金調達しても投資家は同じトークンを受け取ることになり、そのトークン同士で交換が容易にできる。それによって、流動性が高まり、地方自治体は起債の際に流動性プレミアムを多く上乗せせずに済む。

ただ、地方自治体のICOは前例がほぼないうえに、詐欺まがいのICOが行われた過去があることから、ICOについての不信感がぬぐい切れていない。2018年2月に、ベネズエラが独自の仮想通貨Petroを発行して資金調達した。その仮想通貨は、同国で産出される石油を裏付けとするといわれているが、本当にそうなっているのか詳細は不明である。

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