トヨタ「ランクル」が世界中で愛用される理由 各地の過酷な道路環境にも耐える

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当初より、ランドクルーザーは国内に限らず海外でも販売されることを前提に開発されてきた。今日、ランドクルーザー/プラドにとって最大の市場は中近東だという。くわえて、欧州、中国、アフリカ、オーストラリア、ロシアなどで販売されている。

世界的なランドクルーザー人気の背景にあるのは、現場・現物の物づくりにあると開発責任者は語る。現場・現物・現実といわれる三現主義に基づくモノづくりは、さまざまなモノづくり業種においてよく語られるが、開発責任者自ら40数カ国に及ぶ各地を訪れ、顧客に直接会って使われ方を見極めるのは容易でないはずだ。ランドクルーザー/プラドに対する世界の厚い信頼と期待の原点は、そこにありそうだ。

世界各地の過酷な道路状況

2012年の統計とやや古いが、総務省統計局による世界の道路舗装率(国土交通省資料)によると、米国と欧州の主要国はほぼ100%で、日本は80%とある。国内においてわれわれは、日常的に未舗装路をクルマで走ることはほとんどないと言っていい。

ところが欧米では、道路の舗装率が100%だとはいっても、都市中心部を離れると民家もまばらで未舗装の道路脇へ乗り出す機会が日本で思っているより多い現実がある。欧米では日本のように都市部に人口が集中する例はまれだ。たとえば100万人以上が住む都市の数を調べると、日本は細長く平地の少ない国土に12もの100万規模の都市が存在するのに対し、日本の25倍も国土が大きいアメリカでも10都市、ドイツは4都市、イギリスでは2都市、フランスはパリのみと全体的に少なく、国の中で人々が分散して暮らしていることがわかる。

また欧米では休暇を長くとる習慣があり、1年のなかで郊外に暮らす日々が当たり前のようにあって、未舗装の地面を走る機会は身近にある。

今日のSUVブームも、単にセダンやステーションワゴンといった従来の車種と趣の異なる価値に面白さや新鮮さを覚えるだけでなく、本格的な4輪駆動性能はなくても、車高が高いことにより凹凸のある未舗装の地面で床下を損傷せず乗り入れられる実用面が価値として認識されているはずだ。合理的な生き方を求める欧米人が、単に流行りだけで物選びをするとは思えない。

日本では想像もつかない世界各地の過酷な道路状況について、ランドクルーザーの開発責任者に聞いた事例をいくつか紹介してみる。

たとえばUAE(アラブ首長国連邦)で行われている観光の砂漠ツアーではランドクルーザーが使われているという。砂漠と聞けば悪路を走る印象があるが、砂漠に敷設され果てしなく続く舗装路では、気温が50℃にも達するような環境下で時速200kmもの速度を出す場面もあるそうだ。あるいは、まさしく砂漠を駆けぬけることでストレスを発散させるといった運転を楽しむ人もあるという。非日常の体験をする場が日常の近くにあり、舗装路/未舗装路を問わず極限の性能が試される実態が中近東にはある。

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