トヨタ「ランクル」が世界中で愛用される理由 各地の過酷な道路環境にも耐える

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オーストラリアでは、奥地へ行くと、未舗装路とはいえ整地された道をクルマが走ると穴が掘られ、それが深くなってタイヤの直径ほど掘られた波状の路面ができてしまうという。そこを10km近くも走り続けなければならなかったり、雨が降れば水が川のように溜まり、それでも生活のため毎日往復しなければならなかったりする人々がいるという。

アフリカはさらに過酷で、ケニアの舗装率はわずか10%でしかなく、雨が降れば洪水になり、1mほどの深さの川を渡っていかなければならないときもある。道路整備が行き届かないだけに橋を掛けてあるはずもなく、そうしたところを行き来し、無事生還できることがランドクルーザーには求められると開発責任者は語った。

想像を超えるような世界の道を走り抜け、走り続けるランドクルーザーの開発で心掛けているのは、単に性能を向上させることだけではなく、旧型で走れた道を同じように走り切れることが不可欠だという。走り抜けられたはずの所で立ち往生すれば、命にかかわる事態となる。

先般、最新のランドクルーザーと同じ車両でレクサスブランドの「LX」に試乗した。レクサスといえば、トヨタの中でも高級かつスポーティな印象のあるプレミアムブランドだが、ほかのSUVの「RX」や「NX」と比べても、LXはよい意味でランドクルーザーらしいサスペンションの動きをし、ゆったりした走行感覚であった。それは、昨今のSUVが舗装路を主体とした硬めの乗り心地になってきているのとは対照的だ。

旧型で走れた道を同じように走り切れることが何より優先されるランドクルーザーのつくりは、レクサスのバッジをつけても変わらないことを知った。

壊れるまで走ってみる実体験から品質を問う

そうした守るべき性能を新型へ継承するため、開発においては「壊し切り」と呼ばれる試験をすると開発責任者は話す。実際の車両で壊れるまで何十万キロも走り続けるのだそうだ。トヨタが新車の品質保持のため設定する基準に合っていればよいのではなく、壊れるまで走ってみる実体験から品質を問う、いわばランドクルーザー基準とでも言うべき性能確認が行われているのである。

さらに、不具合が出た場合には現地へ行って確認し、その場で修理することも行うという。その経験から今後の解決策を探っていく。故障に対しても現地・現物を貫かなければ、人里離れたところで故障したら生還できないことになってしまうからである。

(写真はトヨタのサイトより)

数々の経験を基に、新車開発をする際には旧型でなぜこの技術や方式を採用したのかを振り返り、その理由を考えてから開発に取り組む、いわゆる温故知新を重視しているとのことだ。

同時にまた、新型であれば環境や安全といった最新の商品性も実現していかなければならない。4輪駆動車といっても悪路走行だけではなく、市街地で日常的に使うことと両立できていることが今日では求められる。

「1つの車種が10年を超え継続して生産されるクルマなので、新型を出すときには、逆に一歩も二歩も先んじていなければ時代遅れになってしまう」と、開発責任者は語る。

誕生から67年に及ぶ歴史が裏付ける悪路走破性や信頼耐久性を落とすことなく、同時に最新の環境や安全性能を満たす開発は、たやすくないはずだ。

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