企業の海外大型買収は円安をもたらすのか

武田薬品工業が7兆円規模の巨額買収

約7兆円の大型買収で注目される武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長(撮影:風間仁一郎)

武田薬品工業によるアイルランド製薬大手・シャイアーの買収が耳目を集めている。買収金額は460億ポンド(約7兆円)と日本企業による海外企業買収としては過去最高額となる。これまでの最高額は2016年7月にソフトバンクから発表された英半導体開発大手・アーム(ARM)に対する買収案件(約3.3兆円)だが、今回はこの倍に相当する超大型の買収である。

こうした日本企業による大規模な対外直接投資が明るみに出ると、為替市場ではそれに付随する円売りの程度が必ず話題となる。海外企業買収に伴う円売り・外貨買いのフローは短期的には円の売り切りであり、その影響が注目されるのは当然である。「短期的には」と付けるのは、中長期的には被買収企業からの配当まで視野に入れる必要があり、第一次所得収支の黒字が膨らむためである。要するに投資段階では円売りだが、結果段階では利益が円買いを伴うため、ネットで見ればその影響は相殺される。

過去には相場の流れにあまり影響しなかった

とはいえ、そもそも公表されている買収額に関し、どの程度の割合で為替取引が発生するのか、しかも元手を円とした取引になるのかは分からない。また、取引が発生する金額や通貨が分かったとしても、それがいつ、どういった頻度で市場に出てくるのかは推測の域を出ない。金融危機後に注目された買収案件(いずれも1兆円以上)に関し、発表日を挟んだ前後3カ月のドル円相場の変化を単純比較してみると、買収案件だけをもって円安効果があったのかどうかは判断が難しい。

たとえば、結果だけを見れば円安効果があったように見える2012年10月の通信大手企業や2014年1月の飲料大手企業による海外企業買収では確かに買収に伴う円売りも出たのだろうが、前者はアベノミクス相場のスタート(2012年11月)と重なり、後者もその追い風が残る状況にあったため、企業買収による円安効果が寄与したのかどうかは分からない。

同様に、2011年5月の製薬大手企業による海外企業買収を挟んではむしろ円高が進んでいるが、これは東日本大震災や原発事故を受けたリスクオフムードの強まりという例外的な環境にあった。海外企業買収はヘッドラインこそ派手だが、それだけで相場の流れが決まることはまずないということだろう。

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