アメリカ人はとてつもない過ちを犯したのか トランプ大統領の裏側を描いた暴露本の真偽

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娘のイヴァンカと娘婿のジャレッドは、富豪の無名の子どもという立場から、世界で活躍するセレブリティ、トランプ・ブランドの顔へと華麗なる変身を遂げるだろう。
スティーヴ・バノンは、ティーパーティー運動の事実上のリーダーになるだろう。
ケリーアン・コンウェイはケーブルニュース界のスターになるだろう。
ラインス・プリーバスとケイティ・ウォルシュは、かつてのような共和党を取り戻せるだろう。
メラニア・トランプは、世間の目から逃れて穏やかに暮らす元の生活に戻れるだろう。
以上が、2016年1月8日当日に関係者が思い描いていた“八方丸く収まる”ともいうべき結末である。敗北は彼ら全員の利益になるはずだった。(42ページより)

ところが予想は見事に外れ、トランプは勝つことになった。それはトランプのみならず、周辺の誰もが予想しなかったことだった。しかし当選してしまった以上は、尻尾を巻いて逃げるわけにはいかないだろう。そもそも本書を読むかぎり、トランプにとって“自己否定”はなによりも耐えがたいものなのだ。

遂行機能と呼ぶべき能力が欠けているにもかかわらず

だから、トランプ政権は誕生してしまった。

トランプは、誰が考えても大統領という仕事に必要と思われる能力、神経科学者なら「遂行機能と呼ぶべき能力がまったく欠けているにもかかわらず、この選挙を戦い抜き、究極の勝利を手にしてしまった。
トランプをよく知る多くの者は頭を抱えていた。どうにか選挙には勝ったが、トランプの頭では新しい職場での任務に対応できるとはとても思えない。トランプには計画を立案する力もなければ、組織をまとめる力もない。集中力もなければ、頭を切り替えることもできない。当面の目標を達成するために自分の行動を制御するなどという芸当はとても無理だ。どんな基本的なことでも、トランプは原因と結果を結びつけることさえできなかった。(52ページより)

この記述が決して大げさなものではないことは、現在進行形で動いているトランプ政権を確認してみれば明らかだろう。先にも触れたとおり、これが政治の話である以上、常識的にはありえないことである。しかし、それが起こってしまった。そこに、トランプ政権の病理があるのだ。

本書を読み進めると、トランプが「ノリ」と「感情」、そして「好き嫌い」で政治を動かしているという事実を改めて痛感させられる。しかも彼は無知で小心者で、知的好奇心も持っておらず、そもそも圧倒的に自信がない。自分に歯向かう人間を簡単に解任してしまうのは、つまりその証拠だ。

この点については、大統領首席戦略官および上級顧問に任命され、のちに辞任したスティーヴ・バノンも指摘をしている。

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