現地合弁でブラジルの洋上設備需要を狙う 川崎重工業 村上彰男常務(船舶海洋事業統括)
――川重が技術指導する領域は?
EEPを立ち上げた現地ゼネコンは、ペトロブラス向けにセミサブ(掘削リグ)を建造した実績があるが、船を造った経験はない。それではドリルシップを造れないから、うちに相談が舞い込んだ。掘削設備の部分は専門とするヨーロッパの企業がサポートするが、それ以外はすべて当社が技術指導を受け持つ。
指導の一環として、まずは数十人を日本の造船所に招いて研修する。2014年度末の操業開始に向けて、日本からは50人程度の技術者を派遣することになると思う。EEP社は現地でかなりの人員を雇用する計画で、操業開始時の造船所の人員は6000人以上になる予定だ。
まずはドリルシップ、次はFPSOなどにも挑戦
――EEP社の事業計画について聞かせて下さい。
まずはきちんとした品質のドリルシップを造って、ペトロブラスに引き渡すのが最優先課題。一方、ペトロブラスによる深海油田の開発は、試掘などの探査、開発、生産と順を追って進んでいく。したがって、(試掘などに使用される)ドリルシップの次は、実際の生産に必要なFPSO(浮体式の原油生産・貯蔵・積み出し設備)や各種作業支援船、シャトルタンカー(沖合いに浮かぶFPSOと陸上タンク間の原油輸送タンカー)などの需要がかなり出てくる。EEPとしても、そうした仕事を積極的に取っていきたい。
――川重が単独で現地に進出する、あるいは日本の造船所で仕事を取ることは考えなかったのですか。
ブラジルは深海油田の開発に際して、洋上生産設備などの周辺産業を自国で育成する政策をとっている。経験がなくても自国内企業への発注を優先し、国際入札で海外企業に発注する場合も、厳しいローカル・コンテンツ(自国で大半を生産する義務)を課している。したがって、日本の造船所で対応するのは難しい。
当社が単独でブラジルに造船所を立ち上げるという選択肢もあるが、ブラジルは税制や法律が非常に複雑なうえ、労働慣習も日本とかなり違う。慣れない地域で一からやっていくのは大変だし、そもそも、単独で出ていっても、ブラジル企業でもない当社にペトロブラスが仕事を発注してくれるかどうか。
そう考えていくと、今回のように現地の企業と組むのがもっとも現実的だ。パートナーの現地ゼネコンと一緒にEEP社を大きく育てて、配当などの形で果実を得る。
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