板門店宣言の638語に込められた大きな希望

現時点で望みうる最高の共同宣言だ

板門店宣言の最後に出てくるのが文大統領の平壌訪問だ。この訪問は今秋に行われることとされた。「信頼を強固にし、南北関係の持続的な発展と朝鮮半島の平和と繁栄、統一に向けた良い流れをさらに拡大していくため、ともに努力することにした」と、その趣旨が述べられている。

平壌で行われた2000年と2007年の過去2回の南北首脳会談では、明確に日程を示した形で追加会談の開催について言及されることはなかった。

金委員長とドナルド・トランプ米大統領の直接会談が6月上旬までに行われる運びとなっており、さらに中国の習近平国家主席が6月に平壌を訪問するとの観測も浮上している。こうした動きの中で、南北の追加会談が日程に組み入れられたということは、新たな目標共有に向けた前向きな流れを維持するのにプラスの効果をもたらすかもしれない。

さらに、北朝鮮の非核化プロセスにしびれを切らせた米ワシントンで再び軍事オプションの機運が高まるリスクも、秋までは押さえ込むことができるだろう。

現時点で望みうる最高の共同宣言

さまざまな点において今回の南北首脳会談は過去に例をみないものであり、国際世論に与えた影響には目を見張るものがあった。トランプ大統領だけでなく、米国民にとっても、金委員長との首脳会談に向けて心づもりをするよい機会となったはずだ。

だが、問題が持ち上がりそうな気配もある。これまでにも述べたように、北朝鮮と韓国は段階的な非核化を望んでいる可能性があり、これは米ホワイトハウスの現在の方針と真っ向から対立する。

年内に朝鮮戦争の終結宣言を目指すとした、野心的な期間設定にもリスクがある。米国が平和協定を「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」に関連づけてくるのはほぼ確実で、これを平和協定に署名するための絶対条件として押しつけてくる可能性があるからだ。

平和協定を締結するには金委員長とトランプ大統領が合意しただけでは足りず、さらに米上院の3分の2の承認が必要になる。米国では北朝鮮の独裁体制への批判は根強く、上院で3分の2の承認を得るのには困難が伴うだろう。人権問題や通常兵器の軍縮で北朝鮮が譲歩しなかったとしたら、なおさらだ。

とはいえ、全体的に見れば、和やかな雰囲気で行われた南北首脳会談とそこから生まれた共同宣言は、米朝首脳会談を目前に控えた重要なタイミングでの緊張緩和に大きく役立つはずだ。

しかも、こうした成果は、韓国や米国の側から大きな譲歩を何ら差し出すことなく得られたものであり、この点も特筆に値する。

トランプ大統領としては、来たるべき米朝首脳会談に向けて、最高のお膳立てが整った格好だ。現時点で望みうることのほぼすべてに、北朝鮮は応じているのだから。

(文:チャド・オキャロル、フィヨドール・テルティツキー)


筆者のチャド・オキャロル氏は北朝鮮ニュースの創設者、フィヨドール・テルティツキー氏は北朝鮮ニュース有料版のニュースアナリスト。
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