板門店宣言の638語に込められた大きな希望 現時点で望みうる最高の共同宣言だ
「当局間協議を緊密にし、民間交流と協力を円満に進めるため」の「共同連絡事務所」を設置するとした点も、新しい動きだ。
開城という場所が注目に値する。開城工業団地は南北経済交流の象徴だったが、閉鎖されている。その開城を連絡事務所の設置場所に選んだということは、工業団地の再稼働が共通目標になったことをうかがわせる。この種の連絡事務所を設置する場所としては、南北首脳会談の会場となった板門店が有力な候補となり得たはずなのに、それでもあえて開城を選んだ点に、このことがよく表れている。
鉄道事業や離散家族再会にも言及
2007年の共同宣言では、西海岸沿いで南北間の鉄道貨物輸送を開始することに加え、開城—新義州(シニジュ)間の鉄道改修が目標とされたが、今回の板門店宣言は東海岸沿いの鉄道にも言及している。日本海側の元山(ウォンサン)、咸興(ハムン)、端川(タンチョン)、吉州(キルジュ)、清津(チョンジン)、羅先(ラソン)を結ぶ鉄道だ。
東海岸沿いの鉄道近代化に韓国が関心を寄せているということは、韓国がロシアとの鉄道連結を模索していることを示唆する。
重要なのは、国際社会が北朝鮮に強力な制裁を加えている中にあって、韓国政府が北朝鮮国内のインフラ事業に関してそれほど官僚的な対応をとっているようには見えないことだ。とりわけ、こうしたインフラ事業が韓国側の人材と資源を用いて行われる場合には、韓国側は柔軟な姿勢をとっているように見える。
離散家族の再会は2000年の南北首脳会談以降、定番ともなってきた項目だが、今回の板門店宣言でも改めて明記された。これは文句なしに、歓迎すべき動きだろう。
共同宣言でうたわれた離散家族の再会には、明確な日程が伴っている。8月15日、日本の植民地支配からの解放記念日だ。
確かに、その先に関しては何の合意も示されていない。とはいえ、南北首脳会談前には、この問題を話し合う意向が北朝鮮にあるのかどうかさえ不安視されていた点を忘れてはならない。
これは北朝鮮の国営メディアが昨年6月、韓国に「拉致」されている脱北者13人が北朝鮮に送還されない限り、離散家族の再会は今後行われなくなる可能性があると報じたことと関係している。韓国側は北朝鮮の要求に応じる姿勢をほとんど見せておらず、こうした段階で離散家族再会の動きが出てきたことは、北朝鮮の柔軟性を示す、もう一つの事例といってよい。