板門店宣言の638語に込められた大きな希望 現時点で望みうる最高の共同宣言だ
板門店宣言は、その大部分が1972年、1992年、2000年、2007年と過去に発表された共同宣言の焼き直しだ。とはいえ、注目すべき新たな内容もいくつか含まれている。
朝鮮戦争の終結宣言について、「年内」の時間軸が示されたのは、今回が初めてだ。「南と北は、休戦協定締結65年となる今年、終戦を宣言し、休戦協定を平和協定に転換し、恒久的で強固な平和体制を構築するため、南北米3者、または南北米中4者会談の開催を積極的に推進していくことにした」と共同宣言は述べている。
これは、野心的という形容詞では表現しきれないほどの、あまりに野心的すぎる目標だ。
「年内」の終戦宣言には多くの障壁がある
もちろん、非核化は「年内に終戦」の目標と明確に結びつけられているわけではない。だが、非核化と終戦宣言を個別に実現するのは難しいだろう。米国は非核化で目立った進展がなければ、平和協定の交渉には応じないだろうし、北朝鮮は平和協定で目に見える進展が得られなければ、米国の求める「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」に向けて大きく歩み寄ることはないだろう。
重大な障壁は、他にもある。休戦協定は米国と韓国ではなく、国連によって署名されたものであるからだ。休戦協定に署名した米軍の中将と大将は国連軍を代表していた。一方、共産主義陣営で署名したのは、中国人民義勇軍(今は存在しない)と北朝鮮だった。韓国は一切署名していない。
つまり、休戦協定は国連、中国人民義勇軍、北朝鮮によって締結されたものであり、米国、韓国、北朝鮮、中国の間で交わされた合意ではないのだ。しかも、休戦協定は1994年、1996年、2003年、2006年、2009年、2013年の6回にわたって北朝鮮から破棄されている。法的な観点でいえば「年内の終戦宣言」は、韓国が過去に署名したこともなく、北朝鮮から破棄されたことで24年間も効力を失っていた休戦協定に手をつけることになるわけだ。
さらに、平和協定への動きを加速させる過程で、日本やロシア、場合によっては中国の関与を直接的に閉め出すことになれば、米国と韓国、北朝鮮の前には思わぬ障壁が立ちはだかることになるかもしれない。こうした問題は、いかに誠実に事を運んだとしても起き得るものだ。