復興途上の宮城「漁業」を襲った新たな試練 空前の不漁に出荷自主規制が直撃
韓国は東京電力の福島原発事故に伴う汚染水問題の深刻化を踏まえて、2013年9月に東北地方を含む東日本8県の水産物の輸入を全面的に禁止した。その結果、宮城県内の養殖業者はホタテについても韓国への出荷ができなくなり、販路を失った。
代わって北海道から韓国への輸出が急増。東北地方への半成貝の販売価格も高騰した。そこに空前の不漁が重なった。養殖業者の中では「過密養殖が原因で、東北に出荷される半成貝の品質が落ちているのではないか」との指摘もあるが、はっきりしたことは分かっていない。
石巻市雄勝町では不漁が原因で昨年秋、恒例の「ホタテ祭」が中止に追い込まれた。雄勝町でホタテ養殖を営む漁師は1000万円規模の損失を被った。「今年のホタテ養殖の規模は3分の1に減らさざるをえない」という。
宮城県漁業協同組合によれば、2017年度のホタテの生産量は、2年前の約5割まで落ち込み、4000トン程度にとどまったという。
秋サケの水揚げ高は震災前の2割以下
異変は漁(りょう)にも現われている。
石巻市北上町十三浜で秋サケの漁を営む佐藤敏之さん(52)は、「昨年はまるきり獲れなかった」という。「漁獲高はだいたい3分の1。このままでは高台に再建した自宅のローンを払うのにも支障が出る」(佐藤さん)。
宮城県漁協によれば、震災前の2009年度に421トンあった秋サケの水揚げ高は2017年度には70トンに減少した。2016年度の109トンと比べても落ち込みが大きい。
秋サケの不漁とは裏腹に、イワシやヒラメなど暖流に乗ってくる魚が多く獲れたという。しかし、鮮度の維持が難しく、満足な売り物になったわけではなかった。
一方で比較的順調なのがワカメの養殖だ。全国的に品薄感が続く中で、宮城県産への需要は根強い。震災直後の2011年に相場が高騰。その後、生産量も持ち直してきた。
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