注意!妊婦には食べすぎていけない魚がある 水銀が子供の発達に悪影響を与えるリスクも
厚生労働省ではパンフレット(「これからママになるあなたへ~お魚について知っておいてほしいこと」)を作成し、妊婦に呼び掛けている。たとえば、メバチマグロは1週間に約80gであれば食べてもいいようだ。
また、複数魚種を組み合わせる場合の調整方法も記されている。しかしこの表を見ても、80gがどのくらいの量なのか、イメージがつきにくい。
そこでメバチマグロ80gを切り出してみた。すると予想以上に量が少ないことに驚いた。これではマグロ丼や海鮮丼を食べたら、1週間の目安となる摂取量を超えてしまうこともあるのではないか。
さらに1週間に表内に記された魚を複数食べる場合は、合計が規定量を超えないように魚種と量を調整しないといけない。そのため1種類ずつの魚の分量が減り、何とも味気ない分量となってしまう。ここまで減らす必要があるのだと知り驚いた。
妊娠期は胎児と母体のために積極的に栄養をとるよう促される。個人差はあるものの、食欲が旺盛になる時期もあり、80gの魚はペロリと平らげてしまうくらいの少なさである。厚生労働省は、1週間に目安量を超えて食べた場合は翌週は控えることをパンフレットで呼びかけている。
風評被害を気にする厚生労働省
厚生労働省の通知をみると、「本注意事項については、いわゆる風評被害が生じることのないよう正確なご理解をよろしくお願いします」と強調表記もされている。ここで改めて「風評被害」とは何か、調べてみた。「事故や事件のあと、根拠のないうわさや憶測などで発生する経済的被害」(大辞林)とある。つまり、産業界への配慮を意味している。
この経済的被害への憂慮が、国内の消費者への積極的な情報提供や啓発に抑制的に働いていることはないだろうか。ちなみに「風評被害」にかかわる記述は、2003年の通知にはなく、2005年の改定時に補記されたものである。当時のパブリックコメントには、水産・漁業関係者からの「風評被害を回避してほしい」「節度ある報道が行なわれるように」「風評被害が発生したら事態収拾のため適切な対応を」などの意見が複数寄せられていた。
妊婦は、これから生まれてくる子どものために最善の妊娠期間を過ごすことを切実に願っている。妊娠期間中はちょっとした体調変化にも敏感になり、口にするものすべてに気を使う。だから妊娠していない時期に比べて情報に対して敏感に反応することは確かである。
しかし、合計特殊出生率が1.5を切っている中、妊娠期に限る魚の消費量のコントロールが産業界に与える影響が大きいのだろうか。健康的で安心できる妊娠期間を過ごすために、わかりやすい的確な情報提供を優先させる必要があるのではないか。
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