核実験場廃棄だけでは非核化にならない理由 核兵器開発の関連施設は100~150カ所もある

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衛星写真を使って、北朝鮮を観察している米国の北朝鮮分析サイト「38ノース」は4月30日、逆に「依然として地下核実験を敢行できる状態にある」と、中国とは正反対の結果を明らかにしている。

それによれば昨年9月の6回目の核実験後、北側の坑道は放棄されたが、これとは別に掘削工事を行ってきた西側と南側の坑道では、いつでも核実験が可能な状態だというのだ。

正恩氏が明らかにした「まだ使える2つの坑道」は、38ノースが指摘する西側と南側2つの坑道と一致する。

正恩氏の一連の首脳外交を支持し、後ろだてになっている中国から疑問が呈され、対立しているはずの米国の研究機関からお墨付きをもらった正恩氏は、さぞ戸惑っていることだろう。

韓国の核専門家も、比較的浅い場所で行われる核実験の揺れは、他の坑道に影響を与えない可能性が高いとメディアに答えている。2本の坑道は、いまだに使える状態との見方だ。

いったん廃棄をしながら元に戻した前科も

正恩氏の発言を裏付ける見方が多いものの、問題は、北朝鮮が過去の行動にある。

核施設の廃棄をしながら、元に戻ったことがあるからだ。例えば2008年6月、北朝鮮は、平壌郊外にある寧辺(ヨンビョン)核施設の5メガワット冷却塔を爆破し、その様子を世界に生中継することを許した。

これを受けて米国は、同じ年の10月、北朝鮮を米国のテロ支援国名簿から除外したが、のちに北朝鮮がひそかに核開発を続けていたことが発覚しており、米政府はこの苦い記憶を忘れていない。

それでは豊渓里の放棄はどう進められるのか。現在のところ、核兵器の管理を担当する国際原子力機関(IAEA)の担当者に設計図をすべて公開したうえで、坑道の入り口をコンクリートで固める方式が取られそうだ。全体を爆破する方法もあるが、核実験後に、周辺地域で山崩れが起きるなど地盤が不安定になっているとの見方もがあるため、爆破は難しそうだという。

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