『転職にまつわる誓約書はどこまで有効ですか?』(37歳男性) 城繁幸の非エリートキャリア相談

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<城繁幸氏の診断>

診断:『転職制限が有効なケース』

 終身雇用の崩壊と共に、人材の流動化は年々進んでいます。最近は第二新卒市場(入社3年以内の転職市場)ばかりが注目されていますが、キャリア採用の花形は今も昔も30代です。キャリアが積み上げられ、一番戦力として脂が乗り切った年代なんですね。

 人材紹介会社も、この年代の転職にもっとも力を入れています。年収が高い分、彼らの手にするフィーも高額なためです。また、いわゆるヘッドハンター達がターゲットとするのも、まさにこの年代が中心です。それだけ企業側のニーズが強いんですね。

 ただし、これは引き抜かれる企業側からするとたまったもんではありません。10年以上かけて育成してきた現場のリーダー・課長クラスが、ある日突然抜けてしまうわけですから。

 近年、就業規則や誓約書といった形で「同業他社への一定期間の転職を禁じる」企業が増えているのは、これが理由です。

 ただ、実際のところ、こういった内規の効果ははなはだ疑問です。憲法には「職業選択の自由」が明記されており、これと真っ向から対立するわけですから。実際、判例を見ても、非常に企業側にとっては厳しい判断が目立ちます。

 労働者個人の持つノウハウやスキルのうち、他の従業員でも有しているような一般的なものについては、労働者個人の能力として制限の対象とはなりません。問題となるのは、それより+α の部分ですね。

 一応、転職制限が一定範囲で認められそうなケース(この場合も若干の違約金支払いで済むケースが主流ですが)としては、以下のようなものが考えられます。

 ・ 転職者が経営陣かそれに準ずる幹部クラスであり、企業の経営情報を知る立場にある。

 ・ 彼がもたらす情報、スキルのうち、能力ではなく立場を利用して得られるものが多い。

 たとえば凄腕営業マンが転職してもなんら問題はありませんが、顧客リストを丸暗記している営業本部長がライバル社に転職するのはまずいというわけです。

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