口うるさいフランス人が使う強烈な"皮肉" こんな「悪のマクシム」が生きる武器になる

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そして、もしあなたが、今も、そして今後も、人間関係で苦労をしたくないのなら(あるいは、周囲からの嫉妬・怨嗟という鋭い矢に貫かれたくないのなら)、謙虚という隠れ蓑で体を覆っておくことをおすすめします。
謙虚という隠れ蓑は、時に「鎧・兜」として役に立ちます。

恋愛に悩んだときのマクシム

最後に、恋についてのマクシムも紹介しましょう。ラ・ロシュフーコーは熱烈な恋に生きた人であり、また彼がマクシムを考えた貴族のサロンの主たる話題は恋愛でした。

「ほんとうの恋というのは幽霊のようなものである。だれもがその話をするが、実際に見た人はほとんどいない」(ラ・ロシュフーコー)

 

さらに加えるなら、恋の対象をはっきり見るということも、男にとっても女にとってもいちばん難しいことなのです。もっとも、これができるような人は、恋愛などしないのですが。

「恋というのは燃えさかる火と同じで、絶えずかき立てられていないと消えてしまうものである。そして、希望をもったり、あるいは逆に不安になったりしなくなったとたん、それは生きることをやめるのである」(ラ・ロシュフーコー)

 

恋というのはひとつの「状態」ですから、「維持」しようという気持ちがなければたちまち変質してしまいます。そう、恋というのはマンションと同じで、手に入れるよりもメンテナンスにコストがかかるものなのです。

「嫉妬はかならずや愛と同時に生まれるが、かならずしも愛と同時に死ぬとはかぎらない」(ラ・ロシュフーコー)

 

『悪の箴言(マクシム) 耳をふさぎたくなる270の言葉』(祥伝社)書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

このマクシムを私なりに言い換えると「嫉妬は愛よりも長生きする」。
嫉妬は愛が生んだ子どもであるからして、愛が死んだ後も、なおしばらくは生き続けるのです。

離婚した元夫や別れた元恋人による殺人というのも、実は、こうした愛よりも長生きする嫉妬に起因しています。愛が死んだあとも嫉妬はピンピンしているから、どうしても、そこから強烈な憎しみが生まれてくるのです。

いかがでしたでしょうか。今回紹介したマクシムは、私が、生涯をかけて集めた270のマクシムを収録した『悪の箴言』からご紹介しました。

言葉の短剣は、両刃の剣。使い方には気をつけてお使いください。何かの壁にぶつかったときに、そっと心の中でつぶやいてみるという使い方からはじめられることをおすすめします。

鹿島 茂 仏文学者

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かしま しげる / Shigeru Kashima

明治大学教授。1949年横浜生まれ。1973年東京大学仏文科卒業。1978年同大学大学院人文科学研究科博士課程修了。専門は19世紀フランス文学。『職業別パリ風俗』で読売文学賞評論・伝記賞を受賞するなど数多くの受賞歴がある。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMA images STUDIO」を開設

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