東宝、一度諦めた海外進出に再挑戦する理由

ハリウッド版「ゴジラ」と「君の名は。」がカギ

「もちろん東宝の看板は最大限活用しています。世界3番目の映画市場でトップを維持していて、『ゴジラ』というIP(知的財産)もあります。メジャースタジオには東宝の名前は必ずインプットされています。洋画配給の東宝東和を通じた関係性がメジャースタジオとすでに構築されていたこともメリットです」

やはり東宝ブランドの存在感は小さくない。東宝東和の代表取締役を長らく務めた松岡氏の人脈やビジネスノウハウも活かされたのは想像に難くない。しかしブランドだけでビジネスが進むわけではない。さらにこれを支えるのが企画力だ。

松岡宏泰(まつおか ひろやす)/東宝株式会社 取締役 映像本部映画営業担当 兼 同国際担当 兼 西日本映画営業担当。2016年より現職を務める(撮影:今井康一)

「企画がよくなければ(海外の)スタジオも興味を持ってくれません。今回の3作品はどれも魅力的です。だからお話ができた」とコンテンツの強さを理由に挙げる。そしてこの企画について、東宝には独自の方向性がある。

「今後も出資を考えています。ただすでにある企画の中で、難しい企画であれば『どうぞ』と言われますが、いい企画であれば『いやですよ』で終わります。ですからわれわれは自分たちから企画を持ち込みます。その条件として日本配給と出資をさせていただきますと。さらにクオリティをコントロールするために製作にも声を出します。そのためにも出資者であるべきだと考えています」

外からの声をかかるのを待つのでなく、自ら企画を生みだす攻めの姿勢。ここに製作の根幹からかかわるカギがある。

「『ゴジラ』では1998年の作品(トライスター・ピクチャーズ)も含めて出資はせずに、2014年の『GODZILLA ゴジラ』でも国内配給権以外の権利は持ちませんでした。ただ今回は粘り強く交渉をしました。相手も理解してくれることで最終的に『ゴジラ2』への出資に至ったわけです」

巧みな交渉は3つのプロジェクトに参加するアメリカ側の映画会社が、それぞれワーナーブラザース、ユニバーサル、パラマウント・ピクチャーズと異なることにも表れている。ハリウッドメジャー3社と並行して交渉することも、今回は大きな力を発揮したはずだ。

「いい意味での東宝らしさは、どなたとでも広くお付き合いをすること。海外でもそれでいいのでないかと思います。特定のスタジオとがっつり組む選択肢もありますが、単独スタジオで作品を複数同時に展開するのが難しい」

なぜ一度縮小した海外事業をまた目指す?

そもそも東宝は、なぜ海外事業にこれほどまで積極的になったのだろうか。実は東宝の海外進出は、今回が初めてでない。1950年代、1960年代に東宝は、ニューヨークやロンドン、パリ、ブラジルといった世界各国に拠点を持っていた。それを1980年代、1990年代にかけてしだいに縮小していった。

1980年代以降の縮小を、「日本映画は映画祭では評価されても、商業的にはなかなか評価されなかった。そのなかで、海外事業をこのまま展開していいんだろうかと考えたのでは」と松岡氏は説明する。1980年代、1990年代の国内映画産業は今ほど好調でなく、国内市場を支えるのに手いっぱいといった事情もあっただろう。

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