法人減税への条件闘争、8%後に残る火種 財政再建よりも景気刺激に力点。党内で反発も
8%への消費税率引き上げを決断し、一大イベントを無事クリアしたかに見える安倍政権。しかし、増税判断と同時にブチ上げた経済対策の詳細については、結論を年末まで先送りした。そのため、目の前には数々の難題が山積している。
「消費税率引き上げによる影響を大幅に緩和する」──今回の消費増税判断の過程で安倍晋三首相がこだわったのは、「一体改革」の本来の趣旨である財政健全化より、むしろ増税影響を減殺するための経済対策だった。8月下旬に及んで有識者会合を開き、実務上のタイムリミットである10月1日ギリギリまで決断を留保し続けたのも、経済対策の内容を官邸主導で押し切るための戦略だったのだろう。平たく言えば、消費増税は駆け引きの材料に使われたということだ。
今回、消費増税とセットで打ち出された経済対策は「5兆円規模の補正予算+1兆円超の減税」。消費税率を3%引き上げることによる税収増は8.1兆円と試算されるが、対する経済対策の規模は、消費税率で換算するとざっと2%分に及ぶ。消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減は1.8兆~2兆円というのが民間調査機関の平均的な予測であり、5兆円は「行き過ぎ」との見方も多い。
麻生太郎財務相が「1.8兆円を埋めるなら1.8兆円でいいではないかといった声もあるが、経済成長のトレンドを元に戻すには足りない」と語るように、これは消費税率引き上げ後の需要減対策を超える財政出動になる可能性が高い。
「とはいえ、その分を国債の増発で賄うと、(財政健全化と)つじつまが合わない話になるので、5兆円の財源は国債の新規発行なしに賄いたい」(麻生財務相)
5兆円の財源は税収の上振れや2012年度決算の剰余金、国債費の不用分によって捻出する方針で、これに復興財源の使い残し分1.1兆円を加えれば「確保できる可能性はある」(財務省)。つまり、今回の経済対策の5兆円規模という数字は財政再建目標との整合性を保つギリギリの落としどころだった。
そもそも昨年の民主党政権下で法律が成立した10%への消費増税は、赤字国債への依存度を減らすために、差し引きで10兆円を超すネットでの増税とするところにポイントがあった。言うまでもなく、財源不足により一般会計予算の半分を借金に頼るようになった状況を少しでも改善するためだ。が、安倍政権ではその本来の趣旨を打ち消しかねない規模の減税議論が本格化している。
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