遺伝子的な差異は社会的不平等を生み出すか 教育・所得格差はゲノムで説明できる?

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取り上げられていく疑問は無数にあるが、一部を紹介すると次のようになる。

優秀な人間は優秀な人間と交配することで、能力は時が経つにつれ偏っていくのか?

人種による遺伝的な差異はどの程度か?

栄えている国と衰退する国に関連する要因の一つとして、遺伝子は寄与しているのか?

遺伝子と環境の相互作用によって我々の能力や病気は発現することが近年分かってきたが、どのような環境と遺伝子が合わさった時に特定の効果が出るかを明らかにすることはできるのだろうか?

などなど、遺伝学について現状わかっていることを整理し、問題を浮かび上がらせ、仮説を提示し、多くの推測をめぐらせることで社会ゲノム科学革命の道を歩んでいく。

双子研究の検証の難しさ

本書ではまず第2章「遺伝率の耐久性」で、当たり前に行われてきた双子研究の検証の難しさーー二卵性の双子の遺伝子は50パーセント共通していることを前提としているが、両親がそもそも遺伝的にいくらか似ている場合、遺伝子の類似性は50パーセントよりも大きくなり前提と計算が崩れるーーなどを取り上げていく。

また、遺伝子と病気や能力の結びつきは単純な関係性にあるものはごくごく少数で、ほとんどは多くの遺伝子が関連しあって表現型へと結びつくなど、ようは”遺伝子とその発現を関連付けるのは現時点ではまだまだむずかしいよ”という話が続く。

が、ここではそこについては深く踏み込まずに、上記で紹介した問いかけの一部を細かくみていこう。まず「優秀な人間は優秀な人間と交配することで、能力は時間が経つにつれて偏っていくのか?」だけれども、これはいかにもありそうな話だ。大学卒の男性は、大学卒の女性と結婚する可能性が高く、教育、職業、所得が似通った二人が結婚し、その背後にある遺伝子型がかけあわされていくと、子どもにもそうした形質が受け継がれていくのではないだろうか。確かに、遺伝子の特徴は配偶者同士でいくらかの相関はある一方、実は子どもは平均に回帰していく。

つまり、どんどん優秀になっていく子どもは遺伝子的には存在しないことになる。なので、我々がそうと意識せずとも遺伝子格差社会に位置づけられているというのは(少なくとも遺伝子を観る限りでは)なさそうだが、学歴についての配偶者間の類似は20世紀前半と後半では後半の方が高い(配偶者の教育水準に大きな格差が生まれている)という事実もあり、気になる。

“配偶者は確かにある程度遺伝子的に似ているが、類似性が増す傾向はない。すると、多くの学者があると言っている学歴による選別の増加は、環境側について起きているという結論になるかもしれない。”

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