南北首脳会談、「終戦宣言」がマズすぎる理由 終戦どころか戦争への一歩になる可能性も

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カプラン氏は、首脳会談の準備にかかわっている米国の情報コミュニティ高官たちとの最近の会話の中で、どう転んだとしても首脳会談は衝突へ向かうのではないか、という確信を得たという。トランプ大統領が首脳会談に現れ、ボルトン氏が考えているように金委員長がワナを仕掛けているとすれば、大統領はあっという間に態度を変えて、金委員長を攻撃するようになり、これが朝鮮半島における重大な危機につながりかねない、と見ている高官もいる。

この観点に立てば、北朝鮮問題解決のカギを握るのは中国と米国、ということになる。トランプ政権が、決定的な形で問題を「解決」すると決めるならば、中国と新しいリーダーについての合意に至る必要があり、そして韓国と日本はそれに追従するようにしなければならない。

軍事行動を起こす場合、韓国には相談しない

北朝鮮による核兵器放棄の準備はできているという主張の信憑性はワシントンではゼロだ。何年もの交渉と何度にもわたる取引の失敗を経験している諜報機関の職員たちにしてみれば、そんなことありえないのである。

それでも、米国は問題を「管理」することを選ぶかもしれない。非核化まではいかなくても、難題を先送りするためにとりあえず協定を承諾して、その間に朝鮮半島における米国の軍事力を増強し、将来的に北朝鮮に決定的な一打を与えられるようにするのである。

「北朝鮮はそのうち米国と結んだ協定から手を引く口実を見つけるという確信を持っている」と、ある諜報機関の職員は話す。北朝鮮が「予想どおり」に核兵器や長距離ミサイルの実験に戻れば、米国はすぐさま軍事力で圧倒する形で反応するだろう。こうした攻撃は中国と連携することも可能だろう、とこの職員はほのめかす。その場合、いかなる軍事行動にも反対する韓国には事前相談はしないだろう、とも話す。

こうした形で27日の終戦宣言が容赦なく戦争へと向かうかもしれない。もちろん、トランプ大統領がその決定権を握る、ということであれば、それはなおさら予想のつかないことになりかねない。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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