南北首脳会談、「終戦宣言」がマズすぎる理由

終戦どころか戦争への一歩になる可能性も

「トランプ大統領は、母国では政治的窮地から脱していると思っているかもしれない」と、韓昇洲(ハン・スンジュ)元韓国外務部長官は、ソウルで開かれた会合でこう話した。

「金委員長は北朝鮮の核保有国としてのステータスが認められたと宣言し、それゆえに、米国との非核化に関するいかなる交渉も核保有国間の軍縮交渉になると宣言するだろう。文大統領は(一時的ではあるが)朝鮮で和平がもたらされたこと、しかしながら北朝鮮での非核化が間近にあると間違った認識を人々に与えることで、韓国では感謝と批判の両方を受けるのではないか」

強硬派ボルトンがもくろんでいるのは

もう1つの可能性としてあるのは、トランプ大統領が「北朝鮮が非核化へと向かう真のステップを提供することを拒否した」と主張し、立ち去ることである。これこそ、国家安全保障担当大統領補佐官ジョン・ボルトン氏率いる強硬派が準備していることだ。

ボルトン氏と働いたことのある元政府高官によると、ボルトン氏は金委員長や北朝鮮人は「トランプ大統領をバカにしている悪党ども」であるとトランプ大統領を説きふせることを期待して補佐官を務めているという。「(ボルトン氏は)米朝首脳会談の前に、トランプ大統領に金正恩らはいかさまする可能性があり、検証可能な厳しいアクションプランが必要だと思わせるように仕向けるだろう」とこの高官は話す。

一方、金委員長はこうした可能性に対しても準備ができているようだ。政治ジャーナリストのフレッド・カプラン氏は、ウェブマガジン「スレート」に「会談が失敗することは、むしろ金委員長には好都合かもしれない」と書いている。そうすることで、北朝鮮を経済的に支援してくれる金委員長の上顧客たち――韓国、中国、そしてロシア――に誠意を示すことができるからだ。

「首脳会談が失敗すれば、その失敗はトランプのせいにされるだろう」とカプラン氏は書いている。

「そしてトランプがその失敗に炎と怒りのレトリックを再燃させることで反応し、実際の一斉射撃の脅しを行えば、北朝鮮との緊張感が緩和することを望みながらも米国からの安全保障を必要としているアジアの同盟国は、トランプの好戦的な態度を恐れ、米政府から離れていくだろう。そして、それこそが金委員長が最も欲していることもでもある」

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