今世紀中は、日本拠点のノーベル経済学者は出ない
重要なことは、ノーベル賞の受賞実績となった研究をどこで生み出し、その後、一流となった研究者が、ノーベル賞受賞まで、どこに身を置いていたのか、ということが重要なのだ。その実績は、学会では直ちに評価されるから、ノーベル賞受賞前から、オファーが殺到する。だから、そのような研究者は、さらなる研究の発展のために、好きなところを選べる。彼らが選んだ場所というのは、研究環境としてベストのところはずなのだ。だから、受賞時にどこにいるか、というのは、どこにいたときの研究実績であるかと同様にきわめて重要なのだ。
前述の清滝信宏氏は、ハーバードでPhD(博士号)を取得後は、米国、ロンドン、そして米国と移っている。LSE(ロンドン)のときの実績が一番の核となるだろうが、いずれにせよ、日本ではない。したがって、彼がノーベル経済学賞を受賞した場合には、日本人としては、悲嘆にくれなければならないのだ。つまり、そんな才能あふれる日本人が、日本という母国ではなく、外で研究を続けていたことに。
逆に言えば、日本の大学は、批判を受けながらも、かつては、知を生み出し続けていたのであり、近年までは、彼らの欧米への流出を抑えるだけの価値は持っていたということなのだ。最近、iPS細胞の研究者が米国へ流出したことは、したがって、もっとも憂うべきことなのだ。
ノーベル経済学賞を受賞する、日本の研究機関を拠点とする経済学者は、今世紀中には出ないだろう。
それが私の悲しい予言である。
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