六本木ロアビルが姿を消さざるを得ない事情 東京都の耐震強度不足ビル「実名公表」の波紋
しかし、準備組合を設立して10年が経過しても再開発が動き出す様子がない。森ビルでは「ロアビルの解体と六本木5丁目再開発事業は関係ない」(広報)しているが、今回の実名公表で、先行してビル解体に踏み切ることにしたと推察される。
技術的な理由で対応に苦慮しているのが、紀伊國屋書店が保有する新宿の「紀伊國屋書店ビルディング」である。1年前の2017年3月に同ビルは東京都の歴史的建造物に選定されており、建物の外観デザインを損なうような耐震改修がやりにくくなったからだ。
歴史的建造物を選定しているのは、同じ東京都の都市整備局でも都市づくり政策部緑地景観課。選定基準は以下の4点だ。
② 地域のランドマークの役割を果たし、東京都の景観づくりに貢献
③ 可能なかぎり建設当時の状態を保存
④ 外観が容易に確認できる
外側から補強する工法は使えない
紀伊國屋書店ビルディングは、ル・コルビュジエに師事した著名建築家、前川國男が設計し、1964年(昭和39年)に竣工した地上9階地下2階、鉄骨鉄筋コンクリート造のビル。既存ビルの耐震改修では、外側から補強する工法が一般的だが、同ビルでは使えない。内側から建物の構造を強化できる工法を検討している段階で、現時点では耐震改修の時期は決まっていない。
実名公表のビルで、最も厳しい対応に迫られているのが、JR新橋駅前西口地区にある「ニュー新橋ビル」だろう。1971年に竣工した古い区分所有ビルで、2年前に市街地再開発準備組合を設立したばかり。今後の再開発事業の行方がどうなるのかが注目だ。これについては近日公開予定の別稿で詳しく解説したい。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら