「沈みゆくトランプ政権」から逃げ出す人々 騒ぐだけの米国vs大人の対応を見せる中国
この習主席の演説を受け、直後にトランプ大統領は、演説を称賛するような旨を表明した。これはもちろん、演説を本当に評価しているわけではなく、「中国がそうしたソフトな対応に出てきたのは、自分が強烈な圧力を中国に与えたからであって、全て自分の手柄だ、俺は素晴らしい、この素晴らしい俺が、中国はよくやったと称えてやろう」という、強がった姿勢だと言えるだろう。
中国側は、トランプ大統領が、全て自分の手柄であるように吹聴することを当然読んでいるだろう。結果として、トランプ大統領は「俺はすごい、俺バンザイ」と言いつつ、「まあ、このくらいで勘弁しておいてやろう」と、結局は大した対中制裁はできないのではないだろうか。中国は、「名」はトランプ大統領に与えても、「実」がとれればよいはずだ。つまりトランプ政権は中国の手のひらの上で踊らされるにとどまると見込む。
とすれば、米中貿易戦争が過熱し、世界経済・世界貿易に悪影響が生じる、という懸念は、いずれ解消されるだろう。
述べたように、対中輸入関税の対象範囲は、当初の500億ドルから、1000億ドル追加されたわけだが、この経緯も注目される。
火消しに走る閣僚とブチ壊すトランプ
まず、米中貿易戦争懸念から米国株式市場が動揺すると、主要閣僚から火消し発言が行なわれた。具体的には、4日(水)に、ラリー・クドローNEC(国家経済会議)委員長は「最終的に関税の発動を見送る可能性はある」、また、ウィルバー・ロス商務長官は「武力戦争でも最後は交渉で終わる」と語った。
しかし、その直後の5日(木)には、トランプ大統領は対象を1000億ドル分積み増しするという「ぶち壊し発言」を行い、再度市場に波乱が生じた。この発言は、上記の両氏の発言の余りにも直後であるため、「俺は中国を叩いて、英雄になろうとしているのに、なぜお前たちは俺に逆らうのだ」と、大統領が激怒したものと推察している。
これまでトランプ政権では、「何でも俺の言う通りにしろ、トランプ大統領様バンザイと、俺に従え」という姿勢を示してきた。
7日(土)付のウォール・ストリート・ジャーナルでは、トランプ大統領のアマゾン叩きの根拠とされている、「アマゾンは税支払いを回避している、もしくはUSPS(米郵政公社)の運賃を不当に下げさせている」、という点が事実ではないとして、ゲーリー・コーン前NEC委員長がデータに裏打ちされた説明用資料を用いて大統領に進言したが、大統領は全く聞く耳を持たなかった、と報じている。同紙は、ある人物の発言として、大統領がコーン氏の話を一顧だにしなかったのは、大統領が「求めていた説明とは違った」からだ、とも述べている。つまり、誤りでも自分の主張に沿うものは喜び、事実でも自説に沿わないものは聞かない、というのが「トランプ流」なのだろう。
こうして、国益を真剣に考え、事実に基づいた進言をしても、大統領が聞こうとしないので、コーン氏のようにトランプ政権を見捨てて去って行った閣僚もいるし、大統領に疎んじられて解任された閣僚もいる。つまり、沈みゆく船から、閣僚が次々と去っているわけだ。
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