サウジ皇太子が独裁者化しているヤバイ現状 国内外でハレーションを起こしている

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サウジアラビアのムハンマド皇太子(写真:Amir Levy/ロイター)

「悪い政府にとって最も危険な時期とは改革を始めたときである」と、19世紀フランスの政治家で歴史家のトクヴィルは言った。フランス国王ルイ16世が典型例だ。財政再建の必要に迫られ、急ぎ足で改革を進めたことから革命を招き、処刑された。

1980年代のソビエト連邦では共産党書記長に就任したゴルバチョフ氏が改革を進めようとしたが、1991年の末までにソ連は崩壊。ゴルバチョフ氏は権力の座を追われた。同様のことが今、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(32。MBSと呼ばれることが多い)に起きようとしている。

矢継ぎ早に改革を打ち出している

サウジの政情は長きにわたって、比較的安定した状態に保たれてきた。巨額のオイルマネーを国民にバラまく一方で、原理主義的なイスラム教ワッハーブ派の厳格な教義を国民に強要するという、アメとムチが功を奏してきたからだ。

だがここに来て、将来を憂慮せねばならない事態となっている。大規模民主化運動「アラブの春」によってチュニジア、エジプト、リビア、イエメンの長期政権が崩壊したのに続いて、石油価格が急落したからである。これが何を意味しているかを悟ったムハンマド氏は、昨年6月に王位継承順位第1位の皇太子に昇格するや、矢継ぎ早に改革を打ち出してきた。

いくつかの改革は、海外メディアの関心を集め、好意的に報じられている。女性に自動車の運転を解禁し、宗教警察の権限に制約を加えたことが、その代表例だ。宗教警察は、女性がスカーフで髪を隠すといった外出時の服装を長年にわたり取り締まってきた。

だが、その他の政策は問題含みである。ムハンマド氏は、サウジ経済を多様化し、石油への依存度を下げようとしているが、具体策はまだ見えない。

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