韓国の懸念は、北朝鮮が盛んに核・ミサイルの実験をするにともない、高じてきた。韓国は米国の義務を明確にするため、2016年5月には核の「共同管理」を要望し、8月には第三国からの核の脅威に「核の傘を必ず提供するという確実な保証」を求めたが、米国はいずれの要望も断った。
核の「共同管理」は米国と欧州諸国との間で部分的に行われているが、それはNATOの中でのことであり、韓国に米国が認めることはありえない。
「核の傘を提供するという確実な保証」も、米国の核政策に反するので韓国の要望を入れるわけにいかないのだ。
北朝鮮は中国の核の傘の下に入る?
「朝鮮半島の非核化」の場合は、北朝鮮についても厄介な問題がある。
北朝鮮はかつて中国およびソ連と軍事同盟条約を結んでいたが、ソ連崩壊後、ソ連(ロシア)との条約は失効した。しかし、中国との条約は今日も有効である。冷戦終結後の国際情勢は大きく変化し、この条約はすでに形骸化しているとの見方もあるが、それは中国政府の公式の見方ではない。
同条約第2条の、「両締約国は、共同ですべての措置を執りいずれの一方の締約国に対するいかなる国の侵略をも防止する。いずれか一方の締約国がいずれかの国又は同盟国家群から武力攻撃を受けて、それによって戦争状態に陥つたときは他方の締約国は、直ちに全力をあげて軍事上その他の援助を与える」という、いわゆる参戦条項は厳然と残っており、この条約に基づいて中国は北朝鮮に「核の傘」を提供する義務があると解釈することは十分可能だろう。
今のところ、中国の「核の傘」は議論されていないが、中国にとっての理想は、北朝鮮が自前で核武装することをやめ、中国が与える「核の傘」で満足することであろう。北朝鮮が非核化した場合にはこの問題が出てくる可能性がある。そうなると、そもそも不透明な中国の核政策が問われることとなり、韓国に対する米国の「核の傘」以上に扱いにくい問題となるだろう。
このように「朝鮮半島の非核化」であれば、「北朝鮮の非核化」より問題が複雑になることは明らかだが、そもそも論として「朝鮮半島の非核化」とする「必要性」はない。北朝鮮が求めているのはその「安全確保」である。「体制維持」「米国が北朝鮮を敵視しないこと」「平和条約の締結」「不可侵条約の締結」「米国による北朝鮮の国家承認」などと異なる表現はいくつかあるが、本質的には同じことである。
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