「第4の携帯会社」楽天が直面する大きな課題 アマゾンを利する?両刃の剣となる可能性も

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楽天は東京電力や中部電力が持つ鉄塔を活用することで、基地局整備にかかる設備投資額を圧縮する考えだ(撮影:今井康一)

携帯電話事業にはばく大な初期投資がかかるはずだが、楽天は2025年までに設備投資に充てるため、金融機関の借り入れなどで最大約6000億円の資金調達を計画する。これはドコモが1年間にかける設備投資の額とほぼ同じだ。外部からは「少なすぎる」という指摘が相次ぐが、楽天の三木谷浩史社長は「十分足りる。4Gは後発者メリットで安くなっており、お釣りがくるくらいだ」と強気だ。

これについて、通信事業に詳しい野村総合研究所の北俊一氏は「確かに、すごく安いインフラを調達すれば運営はできるだろう」と認めつつも、「有事の対応に問題がないかが気にかかる」と指摘する。

災害やサイバーテロに十分に備えられるか

MNOに移行して自前の通信網を持てば、平常時には利用者が問題なく使えるサービスレベルは確保できるだろう。だが、北氏が懸念するのは、例えば震災などに備えた設備投資をどこまでやっているかの差だ。最大手のドコモは、万が一の場合に備えて山の上にも頑丈なサブの基地局を用意する。東日本大震災のように津波で海外線の基地局がやられても、山の上から電波を送受信することで通信を保つためだ。

また、北氏は「ドコモの基地局は鉄柱を地中の奥深くに打ち込んでおり、大地震でも簡単には倒れない」と評価する。ドコモほどいかなくても、KDDIやソフトバンクもそれぞれ、有事のために莫大なコストをかけている。近年増加するサイバーテロに対しても、3社はコストや人手をかけて対策を打つ。

楽天の設備投資計画の細かい内容は不明だが、こうした部分にかけるコストを低くしていれば、災害時に基地局が軒並み倒れたり、復旧までに時間がかかったりすることにもなりかねない。災害時は家族や知人の安否確認や情報収集で、通信の重要性が最も高まるタイミングだ。北氏は、「新規参入の楽天にそこまで求めるのは無理がある」と理解を示しつつ、「既存3社がそこにどれくらいお金をかけているかに比べれば、楽天のキャリアはどう考えても差が出てしまうのではないか」とみる。

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