震災避難者が「貧困」に陥っていく理不尽 復興しているという勘違いの恐ろしさ

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――除染はまだ終わってもいないとも。

終わったことになっている地域がほとんどだ。そもそも長期目標とはどの程度の期間を想定してかわからないが、除染の長期目標は年1ミリシーベルト以下。全面的に1ミリシーベルト以下にはしないと政府はしており、場所によって1ミリシーベルト以下にならないままのこともありうる。

福島第一原子力発電所の北西部に位置する浪江町では実測の中央値からして年間1.54ミリシーベルトになるという計算を説明会で表に出したうえで、避難指示を解除すると説明している。政府としては年1ミリシーベルト浴びてもいい、年間の被曝量が20ミリシーベルト以下ならば帰れるという立場なのだが、一方で(二次)被曝に関して大丈夫とは言わない。

浪江町は「もう復興している」のか?

――タイトル「地図から消される街」の由来は。

浪江町から避難している人が、「このままでは浪江がなくなってしまう」と語ったことだ。地元がこのままでは消えてしまうと思っている人の姿と、その一方でもう復興していると政府が言っている姿との乖離を、浮き彫りにするために表現した。

――「帰還政策は国防のため」と原子力村の重鎮が語っている?

どうして日本は脱原発できないのか、政治家を含め多方面の人に話を聞いたが、答えは「国防のため」に行き着く。いちばん説得力があったので、原子力村の重鎮の言葉として記録した。

地図から消される街 3.11後の「言ってはいけない真実」 (講談社現代新書)
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――避難者には「捨てられた感」が強いですね。

私たちも明日、ぱっと切り捨てられ、同じ目に遭うかもしれない。自己防衛のためにどうしたらいいのか。避難者は懸命に自分で考えて職に就き、生きている。その姿に学ぶことはとても大事だ。

――「秘密会議」の話はショッキングです。

がれき撤去の作業中に粉塵が飛んで南相馬市のコメを汚染したのではないかという「事案」について、原因究明を始めようという矢先の段階で、原因不明扱いにしようと政府の会議で決めた事実がある。シナリオが先に動く。表に見えていることがいかに取り繕われているのか。国民の一人として大いに心配だ。

――とにかく無関心はいけない。

避難者も二極化しているようだ。立ち直れない人はますます深みにはまっていく。支援もなくなり、世間が関心を持たないことでまた苦しむ。まず苦しんでいる人たちがいるのを可視化していくことが大事だと思う。

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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