震災避難者が「貧困」に陥っていく理不尽 復興しているという勘違いの恐ろしさ

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――賠償金の期限も来ました。

もともと避難で働く場所を替えなければいけなくなった。正規の職業にありつけず、正社員からパートになった人の話はざらに聞かされた。それだけ世帯収入はどうしても下がってくる。

昨年3月の住宅提供打ち切り後に東京に残った人が7割近くいる。東京都のアンケートで170世帯が世帯収入の質問に答えている。結果はほぼ6割が世帯月収20万円以下。しかもその半分が10万円以下だ。つまり全体の3割近くが10万円以下なのだ。それで生活せよというのは酷ではないか。

放射能との闘いをまだ続けなければならない

――居住費は。

民間の賃貸住宅にはとても住めないから、都営住宅の枠で入っている世帯が多い。住宅提供が打ち切りになったときに、経済的には無理だから出身地に帰らざるをえないと帰った人もいる。ただ、放射能汚染が心配で、福島県内の保育園では外遊びさせず、子どもの活動は県外でさせている母親もいる。

青木美希(あおき みき)/1997年北海タイムス社入社。休刊で1998年北海道新聞社に移り、警察担当時に道警裏金問題(2003年11月から約1年報道)を手掛ける。2010年朝日新聞社入社。社会部に所属し震災を取材。2011年特別報道部。手抜き除染報道などで新聞協会賞を3回受賞(撮影:尾形文繁)

影響がよくわからない放射能との闘いをまだ続けなければならない。専門家でも「影響がある」「影響がない」、あるいは「気にしないでいい」「気にしたほうがいい」など、いろいろな見方がある。母親としてどの意見を取るか、自分自身でどう判断するか、悩んでもいる。

――でも何とか生活している?

精神的に参っている人もたくさんいるようだ。福島県の調査では県外避難者に占めるうつや不安障害の比率は9.7%に達する。全国平均は3.0%だから、3倍以上発生している。

――手抜き除染の報道がありました。

手抜き除染自体がどうして起こったのか、どうすれば防げたかについては、新聞では紙面に限りがあるので書き切れない部分が多くある。「これでは“移染”だ」と言う作業員もいた。やっている本人たちが良心の呵責に苦しむような作業を、なぜ被曝リスクを冒しながら、そしてその被曝の除染手当を搾取されながら続けなければならなかったのか。

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