セブン&アイHD、井阪改革1年目の「通信簿」 コンビニ好調の一方、百貨店やEC戦略に課題

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百貨店事業と同様に、オムニチャネル戦略についても足取りが鈍い。「リアル店舗とネット通販の融合」をうたい文句に、グループの通販サイトを結集し、「omni7(オムニセブン)」を立ち上げたのは2015年11月のこと。同時に2018年度に売上高1兆円という目標をブチ上げた。

井阪社長は100日プランを発表した2016年10月に、「不特定多数の顧客にアプローチしてきたことや、(顧客よりも)システム起点で進めてきたことが失敗の要因」と述べ、オムニ戦略の仕切り直しを宣言。昨年11月にはオムニセブンで、ニトリやゼビオなどグループ外の商品の取り扱いも始めた。

IT専業者との提携相次ぐ

ただ、オムニセブンで扱う商品はセブンプレミアムなどのPB(プライベートブランド)やメーカーとの共同開発品が多い。商品のラインナップではアマゾンや楽天市場に水を開けられている。前期のセブン&アイのEC事業売り上げは1087億円(前期比11.4%増)にとどまっている。

セブン&アイの井阪隆一社長は「中期経営計画の目標を必達する」と強調した(編集部撮影)

ネット事業という点においては、昨年11月からアスクルと提携して生鮮宅配サービス「IYフレッシュ」を東京・新宿区と文京区に限定して始めた。対象地区を今年内に城東地区、来年春ごろに城南地区まで広げる計画だ。今年6月には、グループ内のリアル店舗で買い物ポイントが貯まるスマホ用の新アプリも投入する。

とはいえ、ウォルマート傘下の西友は、楽天と組んでネットスーパーを展開することを表明。イオンもヤフーやソフトバンクとの連合でネット通販に乗り出す動きもある。ITや消費者ニーズの変化に対応するためには、同業他社と同じようにIT専業者との連携を模索することも考えられる。

セブン&アイは今回の決算に合わせて、中・四国や九州地方を地盤とするスーパーのイズミと業務提携することを発表した。仕入れの統合や西日本エリアにおける店舗の共同運営などを検討する。ただ、どこまでシナジーを創出できるかは、現時点では不透明だ。

中期計画1年目の結果は、従前の”コンビニ頼み”という収益構造から大きく変わった印象はない。会社側は今2019年2月期について、売上高6兆6830億円(前期比10.7%増)、営業利益4150億円(同6%増)を見込む。中期計画で掲げた目標を達成するためにも、2年目からはGMSや百貨店、ネット戦略における成果が求められる。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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