孤立強めるロシア、高まる不測の事態の憂慮

欧米とロシアの不信の連鎖が続いている

欧米の同盟諸国が反露で結束するのに対し、ロシアが同盟国とみなすカザフは、欧米外交官の追放でロシアに追随せず、むしろロシア離れを画策している。ヌルスルタン・ナザルバエフ大統領は今年1月に訪米し、トランプ大統領と会談。両国関係を「戦略パートナー関係」に格上げすることで一致し、新たに米国人のカザフ入国でビザを免除することを決めた。

ロシア紙『プラウダ』(3月21日)によれば、セルゲイ・ラブロフ露外相はカザフに対し、ビザを免除すれば、米国のスパイが自由往来を認める「ユーラシア経済同盟」のカザフからロシアに入国する恐れがあるとし、他の加盟国と協議するよう求めた。しかし、カザフ政府は「主権国家の権利だ」と、はねつけたという。

同紙によれば、ロシアが主導する集団安保条約に加盟するカザフは最近、軍将校グループを米国に派遣し、米軍施設で訓練を受けさせるなど、米国と軍事協力を進めている。ナザルバエフ大統領は昨年、カザフ語の表記文字を現在のキリル文字からローマ字に変更するよう通達しており、これもロシア離れ、米国接近の動きととれる。米国のカザフへの投資額は計500億ドルに上り、ロシアをしのいでいる。

同盟国が欠如

ロシアとカザフの関係は、2014年のウクライナ危機以降ぎくしゃくしている模様だ。ロシアの極右政党、自由民主党は、ロシア系住民の多いカザフ北部を「ロシア固有の領土」とし、クリミアに続いて併合すべきだと主張、カザフ政府が抗議した。ロシアは「ユーラシア経済同盟」の統合強化に向け、共通通貨導入を主張したが、カザフやベラルーシが拒否する動きもあった。

中央アジア5カ国は昨年、首脳会議の定例化など、地域協力体としての連携強化で合意しており、これもロシア離れととれる。

プーチン大統領は3月1日に行った強硬な反米演説で、「ロシアと同盟諸国が攻撃されたら、直ちに反撃する」などと「同盟諸国」に何度も言及したが、実際にはロシアを同盟国とみなしている国はあまりない。冷戦時代にソ連と東欧諸国が東側陣営として結束した時代とは大きく異なるのである。

こうして、欧米とロシアの不信が連鎖し、ロシアが孤立感を強める中で、不測の事態が憂慮されよう。たとえば、シリアにはロシア軍と米軍が駐留しており、対話のパイプが失われるだけに、偶発的な武力衝突の可能性もないとは言えない。米露は今後、それぞれの核兵器開発を強化し、核軍拡競争が進む。ロシアを追い詰めることに伴うリスクは小さくない。

(文:名越健郎)

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