人口減少を克服する戦略はこの2国に学べ 「圧倒的に強い小国」の秘密とは?
国家レベルの競争力だけではない。個々の産業を見ても、精密機械、ライフサイエンス、金融・保険などで産業クラスター(産学官が一定地域に集積し事業連携を行う状態)を形成。食品のネスレ、時計のスウォッチ・グループ、保険のチューリッヒなどグローバル企業も数多く創出し、国外からもグローバル企業・人材を引き寄せてきた。
全寮制の寄宿舎を基本とするボーディングスクールなど世界の人材がスイスに学びに来る仕組み、そして本社機能や研究機関機能に特化し、グローバル企業がスイスに拠点を構える仕組み、さらにはインフラや生活水準などの高いクオリティー・オブ・ライフで人々がスイスに住み続ける仕組み──これらを構築することで、スイスは優れた事業・教育・生活環境を整備し、グローバル企業・人材を引き寄せてきた。
一方のイスラエルは近年、世界屈指の技術大国とも呼ばれる。世界最高峰の軍事技術を民間に転用し、人工知能(AI)、IoT(モノのインターネット)、自動運転、サイバーセキュリティーなど現代の「メガテック」で優位な地位を構築。さらには「小国」「陸の孤島」である不利な条件から、イノベーションを創造し、製造業よりはハイテク技術分野における開発段階という知識集約型産業に特化してきた。
イスラエルの躍進の秘訣は、ハイテク技術に優れた国造りという「グランドデザイン」を描くと同時に、国のマネジメント体制として、ハイテク技術に特化した国家構造やシステムを構築し「実践」したことが指摘される。
イスラエルにはグーグル、アップル、マイクロソフト、インテルなど世界トップレベルのグローバル企業が多数進出して研究開発拠点を設けている。また同国は「第2のシリコンバレー」とも呼ばれ、ハイテク技術やスタートアップのエコシステム(ビジネスの生態系)を構築している。
実際、米スタートアップゲノム社による17年のスタートアップのエコシステム世界ランキングにおいて、イスラエルのテルアビブが世界第6位にランクされている。1位のシリコンバレーのほかニューヨークやロンドン、北京といった大都市に次ぐ評価を得ているのだ。
ガラパゴスに甘んじた日本
ではスイスとイスラエルの共通点から、日本が世界に影響を与えるようなイノベーションを起こし、国際競争力を高めていくポイントを考えてみたい。
1点目は、両国とも国家レベルでの問題や高い危機感をイノベーションの源泉に転じてきたことである。