人口減少を克服する戦略はこの2国に学べ

「圧倒的に強い小国」の秘密とは?

スイスでは、例えば70年代に日本メーカーがクオーツ時計を実用化したことで時計産業が壊滅的な影響を受けたことを、現在でも「クオーツ・ショック」として国全体の教訓にしている。当時、機械式時計が主流だったスイスの時計産業は存続の危機を迎えた。だが、スウォッチが「低価格×ファッショナブル」というポジショニング戦略で息を吹き返し、その後、同国の名門ブランドであるオメガ、ロンジン、ラドーなどを続々と買収。グループ全体でのブランド戦略が功を奏し、世界一の時計メーカーとなった。現在の時計メーカーの売上高ランキングでは、1位スウォッチ・グループ、2位リシュモン・グループとスイス勢が上位を占めている。

離散と迫害という悲劇の歴史を持つイスラエルも同様だ。政治・宗教・信条等が異なる国々に囲まれた危機感をイノベーションの源泉としてきた。

その点、日本は少子高齢化や構造的な人手不足、都市化・過疎化で「社会問題の先進国」ともいえる。課題を好機と捉えれば、世界に先駆けてイノベーションを起こせる可能性もある。

最初から世界を目指すことで競争力を高めてきた

2点目は、両国とも小国で国内市場だけではビジネスが成立しないことから、最初から世界を目指すしかないという過酷な環境の中で事業を展開してきたことだ。スイスでは国内市場の規模が小さいという難点に対して、スイスブランドという競争優位を最大限に生かし、初めから世界市場を視野に競争力を高めてきた。極めて不利な地理的環境に置かれたイスラエルでも、製造業よりもハイテク技術分野の開発という知識集約型産業に特化し、国内市場を超えて世界市場を目指してスタートすることで競争力を高めてきた。

日本は幸いにも人口が多く国内市場だけで事業が成立する環境だったため、最初から世界市場を目指すという企業は少なかった。それが「ガラパゴス」とも揶揄される状況を生んできた要因でもある。もっとも最近では、メルカリのように創業時からグローバルレベルでのメガテック企業を目指す企業も増えてきている。「最初から世界の舞台で勝負すること」を日本のデフォルト(初期設定)とすることを促進する産学官の取り組みが重要となろう。

最後に、あえてイスラエルと日本の最大の違いを指摘しておきたい。筆者が国費招聘プログラム団長としてイスラエルを視察して驚かされたのは、起業に何度か失敗した人のほうが投資家からのスタートアップ資金を集めやすい、という状況だった。失敗しても取り返しができる国、むしろ失敗経験を高く評価する国がイスラエルなのだ。

日本は現実的には「失敗すると取り返しがつかない国」であり、その慣習が、イノベーションを生み出すことやリスクを取ることを阻害している。失敗から学ぶことを真に評価する国に生まれ変われるかどうか、日本の真価が問われていると言えよう。

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