3200億円ファンドを運用する男の意外な財布 長期運用のカリスマが考えるおカネの使い方

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さわかみファンドを立ち上げるうえでこだわったのが、個人が直接さわかみ投信から買えるものであること。当時の日本では類を見ない直販型の投資信託、いわゆる直販投信であった。

「お客様には運用の哲学をきちんと伝えて理解してもらいたいから、必然的に直販型になる。でもそれだと顧客関連業務やシステム開発が自前となり、莫大な費用がかかる。加えて人気が出れば出るほど資料請求の数も多くなり、1件あたり郵便代を含めると1100円~1200円もかかってしまう。これがかなりキツいんです。

だから正直、設立後の5年間は完全なる赤字でした。私個人の借金もどんどん増えていき、一時は10億円を超えた。その後ファンドの純資産総額が570億円まで成長した2003年頃、ようやく赤字の垂れ流しが終わったんです」

日本人はなぜ投資に「後ろ向き」なのか

以降、さわかみファンドは飛躍的な成長を遂げ、2018年3月現在、純資産総額は約3200億円、基準価額は約2万6000円にまで達している。

直販投信のパイオニアとして世に登場して約19年が経ち、今や日本国内の直販投信の数は10を超える。顧客から見ると販売手数料がかからず、何よりも個人が長期的に資産を形成する際の大きな力となるという直販投信の魅力は一般に知られるようになった。しかし澤上氏は、道は半ばだと話す。

「この5年ほどでうちの純資産総額は大きく伸びているものの、実は解約の方も約2900億円もある。理由はいくつか考えられますが、日本人の貯蓄信仰の根強さも要因の1つだと思います。『投資はリスクが怖いので、やっぱり安定的な預貯金に戻しておこう』という人がいまだに多くいるのです。

でも今後は若い人を中心にこうした価値観が転換され、うちのような直販投信を利用する人が爆発的に増えるだろうと考えています。だから今はまだ道半ばなんです。まだまだ引退はできないね」

そんな澤上氏が、長期投資のほかにもう1つ提唱しているのが、「カッコイイおカネの使い方」だ。

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