カンボジアの「独裁」はどれほどひどいのか NGO、専門家、メディア当事者が証言

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堀潤:想像力を使わないといけませんね。当事者意識を持って、相手の気持ちを想像し、発信していきたいですね。

日本の外交姿勢に「方針転換を」

堀潤:ここまでカンボジアの現状を報告していただきましたが、フン・セン政権のこうした独裁化への道を、なぜ日本は食い止められなかったのかでしょうか?

(写真:GARDEN編集部)

熊岡路矢(日本映画大学教授・カンボジア市民フォーラム):日本政府がよく言うのは、1つ目に「安定があるから」。独裁政権でもいいのではないかというニュアンスです。2つ目に「今よりもっと中国寄りになるのを防ぎたい」ということ。そして3つ目に「日本は静かな外交で、カーテンの向こう側で働きかけている」と。

堀潤:「抗議をしたら中国寄りになる」というロジックは分かるようで分かりません。説明いただけますか?

土井香苗(国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表):非常に短期的な目線でのロジックだと思います。カンボジアが何をやってきても許してきたから、このように独裁化が進んでいきました。外交官は2~3年のスパンで変わり(方針転換を)先送りにしがちですが、「今カンボジアに嫌われても、10年後はカンボジアへのいい影響がある」といった視点で考えてほしいです。

堀潤:自分の住んでいる土地を追われたことに対してデモをしても弾圧されてしまう。こういった状況の中、国際社会がやるべきことは何でしょうか?

伊藤和子(認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ事務局長):欧米の大使館は頑張っています。法廷に傍聴に行ったり抗議声明を出したり。国連も働きかけをしています。国連からの発信は、日本語でも出されていますが、やや弱い表現です。一方で、欧米でははっきりと述べられています。

堀潤:具体的な温度差は?

伊藤和子(認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ事務局長):かなりあります。日本だと7割褒めるような内容で出そうとすることもあります。

堀潤:「カンボジア・デイリー紙」の廃刊も本当に危機的状況ですね。カンボジア国内の今の状況が報じられなくなるということもあり得るのでしょうか?

デボラ・クリッシャー・スティール (カンボジア・デイリー紙の元副発行人):このままだと、あり得ると思います。

堀潤:海外のメディアから、「日本のメディアの発信は弱い」と言われたことがあります。その点はどう思われますか?

デボラ・クリッシャー・スティール (カンボジア・デイリー紙の元副発行人):日本のメディアは十分に伝えられていないと思う。それは、現場のジャーナリストの問題ではなく、トップの編集の意向。もっと大きく取り上げてほしい。

土井香苗(国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表):日本は人権侵害をしていても、まずは褒めるという姿勢があります。変えていかなければなりません。不当な裁判があった時に傍聴するというのは、海外の外交ではよくあること。日本はそれもなかなかやらないので、日本の外交官も今回のデボラさんの訴訟からぜひ実践してほしいと思います。日本も、欧米と協力して影響力を及ぼしていくべきです。方針転換をしていただきたい。

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