カンボジアの「独裁」はどれほどひどいのか NGO、専門家、メディア当事者が証言

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政府は「カンボジア・デイリー紙」の財産を差し押さえ、銀行口座を凍結し、数々の賞を受賞したメディアである私たちのWEBサイトはアクセス不可とされてしまいました。そして、私は政府から名誉棄損で訴えられました。しかし、弁護のために入国すれば出国できなくなるので、行くことはできません。「私の裁判を傍聴して私に伝えてほしい」と希望しています。日本の外交官の方の参加も期待しています。

カンボジアには「ニワトリを黙らせるために、そのうちの数羽を殺す」ということわざがあります。今なされていることは、カンボジアの自由略奪の証人を黙らせるためだと思います。

堀潤:カンボジアの他のメディアはこのことは報道しているのでしょうか。

デボラ・クリッシャー・スティール (カンボジア・デイリー紙の元副発行人):カンボジア国内メディアは政府寄りで、報道されていません。海外メディアがインターネット等で発信しているものはあります。

NGOの活動停止や活動家の逮捕、一般市民への暴力も

堀潤:カンボジアの市民への影響について、ヒューマンライツ・ナウ伊藤さんにお話しいただきます。よろしくお願いします。

伊藤和子(認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ事務局長):2015年にカンボジア野党・救国党創設者で前党首のサム・レンシーさんが来日し、日本の国会議員の方と交流されました。私がミャンマーでの選挙監視団の一員として参加し帰ってきた時のことでした。ミャンマーでは、独裁から民主化への画期的な選挙が行われたところでした。サム・レンシーさんは、「必ず救国党が勝つ」と、民主的な選挙のための支援を求めに来ていたところでした。翌日サム・レンシーさんが韓国に旅立った後、彼のFacebookへの投稿が事実に反する犯罪だとして、彼は亡命生活に入ることになったのです。

2017年6月の地方選挙での野党の躍進から一転して、これだけの問題が起きました。最大野党の救国党だけでなく、他の党にも嫌がらせがあります。メディアも、「カンボジア・デイリー紙」だけでなく、少なくとも15のラジオ局が閉鎖されています。また、最近はテレコミュニケーション法でメールはすべて監視されている前提で連絡が取りづらくなっていますので、「WhatsApp」というメッセージアプリを使っています。

(「Freedom of Assembly in Cambodia」by LICADHO Canadaより)

「NGO登録をしていない団体は違法」「NGO登録する団体は中立が必須」「国家を害することは許されない」といった法律を2017年から活発に適用し、活動家をどんどん逮捕したり、NGOを解散させたりしています。複数の選挙監視NGOで構成した「シチュエーションルーム(選挙対策本部)」を、NGO法に抵触した疑いで活動停止させたのを皮切りに、他の団体にも手が及んでいます。「天然資源の収奪ストップ」を訴える環境保護団体のスタッフの逮捕や、僧侶、草の根活動にかかわる人々が訴追され、逮捕者の数がひどいことになっています。「LICADHO」という人権団体のサイトには逮捕者のリストがあり、様々な人が逮捕されていることが分かります。

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